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  少女、無音で口だけを動かし、「バーカ」と言う。

男「もうこの子嫌だっ!」
女「じゃっ」

  少女、去ろうとする。

男「待ってよ! こっちも営業の、スカウトの仕事だ! 引き下がれねえんだよ! ノルマ達成するまではノコノコ帰れねえんだよ! ていうか、ほんっとに魔物がすぐそこまで来てて、ほんっとにピンチなんだってばよ!」
女「わかったわ。それじゃあ一つだけ聞かせて。そもそも魔法って、何?」
男「魔法っていうのは、魔力を源にした不可能を可能にする神秘の力さ!」
女「抽象的過ぎて全く意味がわからないんだけど。それは熱エネルギー? 電気エネルギーに変換するとどれくらいのものなの?」
男「いや、たぶん変換できないけど」
女「それはおかしいわ。あらゆるエネルギーと運動はロスするものの変換が可能なのよ」
男「・・・知らねえよ。魔法は不思議な力だよ! 以上!」
女「だったら、私の願いなんて叶えずに、その魔法とやらで魔物を退治でもなんでもしたら?」
男「そうだよなあ」
女「・・・君ってほんとに、」

  少女、無言で口を動かして悪口を言う。

男「なんて言ったの? ねえ、なんて言ったの今!? 悪口だよね、絶対悪口だよね!?」
女「君さ、もう少し理屈を通して考えて、定量的に物が言えるようになった方がいいよ」
男「もうこの子嫌だ!」

  少女、去る。
  少女、去り際に男の肩を叩く。

女「ま、出直してきな!」

  男携帯電話を取り出し、上司に報告する。
  「今回もスカウトダメでした」とか「すみません」とか言ってる。
  男が携帯で話していると同時に録音された男の声が流れる。

男の声「その後、僕が会社を起こし、魔法少女ビジネスで成功するのは、別の話である」

  男、ぬいぐるみを使わずに、自分自身を指差して、

男「あ、ちなみに魔物の大群は私1人でなんとかしました(笑)」


  暗転
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