星名 ……それは、
夜見 それでも、…それでも、誰も死ぬ道を選ばなかったよ。（上手を指す。）
星名 え…何で？……何で何で？意味分かんない。皆“死にたがり”だったんでしょ？
夜見 そうだよ。
星名 だったら何で！
夜見 楽しいことするためさ。
星名 …は？
夜見 皆貴女に楽しくないこと増やされた。人生楽しくなかった。死にたいと思った。…それでも、彼等には楽しいことが残ってたんだ。
星名 ……。
夜見 貴女に人生狂わされた…とまでは言わないが、貴女のせいで人生終わらせようとまで思った人達が、それでも“生き続ける”ことを選んだんだ。（下手を指す。）
星名 …そう
夜見 それなのに貴女は自分の人生から逃げるのか。死んで終わりか。楽しくないことしたくないから生きたくないって言うのか。
星名 そうよ。悪い？もう決めたの。私はもう死んでやる。あと何分？早く死にたい。あんたみたいな死神からのお説教なんてもう聞きたくない。早く私を殺してよ！
夜見 あと１分13秒。
星名 え。
夜見 それで貴女の寿命は尽きる。逃げるなら今のうちだ。
星名 …私は逃げない。決めたのよ。
夜見 怖くないのか？死ぬんだぞ。
星名 脅しても無駄よ。
夜見 そ。…じゃあ、夜見は見届けさせてもらうよ。（最初の椅子に座る。）
星名 ……ふぅ…本当に死ぬのね。清々するわ。
夜見 強がっちゃって。
星名 …そうね。強がってるのかもしれない。でも私は最期まで私らしく生きたいから。
夜見 そっか。…じゃあ最後に最高の情報を教えてあげましょうか。
星名 余命30秒くらいの私に言う情報？
夜見 さぁ？夜見が言いたいだけですし。…ここは、現世とあの世を繋ぐ空間って言いましたよね。
星名 …ええ。……あ、分かったかも。
夜見 御明察。ここはヨミの国。貴女達は「黄色い泉」と書くけれど、実際には「夜」にならないと「見えない」。つまり、眠ってる時にしか見えない国。
星名 …夢みたいなもの？
夜見 まぁ、大雑把に言えばね。ついでに言えばこの通りも…あ。
星名 （寿命が尽きて倒れ、少しして起き上がる。）…あれ。
夜見 おっはようございま〜す。さ、それじゃあ進んでもらいましょうか。この“黄泉通り”を。
星名 …うん…（フラフラと歩きだす。）
夜見 あ。
星名 …何？
夜見 最期に聞くの忘れてた。……今、どんな気分？
星名 ……最悪の気分。（上手に退場。）
夜見 そう。夜見の読み通りだね。（下手に退場。）
　・暗転。
終


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