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シズル:だから、ずっと赤いんだよ。
朔次:だって……お前、妊娠した、とか言うから。
朔次:だ、駄目なんだ……。
朔次:俺には、家族がいて……。
朔次:こ、子どもだって、いる。
朔次:お前とは、何でもなかったんだ。
朔次:あの時は、魔が差しただけ。
シズル:朔次さん、もういいの。
朔次:どうして、こんなことに……。
シズル:魔が差しただけだったとしても、私は良かったよ。
シズル:あの時のあなたは、奥さんも子どものことも忘れて、
シズル:学生の頃に戻ったみたいだった。
朔次:……。
シズル:戻れるわけないのにね。
朔次:……シズル。
シズル:なぁに?
朔次:俺も、一緒に殺してくれ。
シズル:駄目。
朔次:殺してくれ。
シズル:あなたは生きるのよ。
シズル:家族も全て失って、
シズル:自分がわからなくなるまで、
シズル:ずっと、私と一緒に生きていくのよ。
朔次:嫌だ。殺して。殺してくれぇ!
シズル:死ぬのは、あの2人だけ。
朔次:シズル……!
シズル:もっともっと、コキアを赤く染めてあげる。
シズル:1年中、永遠に見頃を迎えたみたいに。
シズル:綺麗よ、きっと。
シズル:見に来ようね、朔次さん。

0:シズル、ゆっくりと丘の下へ動き出す

朔次:待って、シズル!
朔次:待ってくれ! やめてくれ! 頼む!

0:シズル、振り返り、笑みを浮かべる
0:やがて、消えていく

朔次:……あ……ああ……。

0:朔次、肩を抱き、震える
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