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女「そ、そんなことって」
男「閻魔様に頼み込んだんだけど、この愛知県にとりつく地縛霊が限界だったんだ」
女「県って、大きくない?」
男「交渉頑張った」
女「偉い」

男、抱き着こうと手を出す。が、拒否。

女「じゃ、なくて……。え、それじゃあ、私が長野に行っちゃったら……」
男「うん。会えなくなる」
女「そんな……。また、二人でいられると思ったのに」
男「ごめん」
女「……いいよ。長野なら、会おうと思えば会えるよ。いつでも、じゃなくなっちゃったけどね」

男と女、うつむく。そして女が顔を上げる。

女「そうだ! なら、閻魔様に頼んで浮遊霊にしてもらえば!」
男「そうか! それなら長野にも行ける! よっしゃ!」
女「でも閻魔様許してくれるのかな」
男「大丈夫さ。俺の交渉術で何とかして見せる。二ヶ月で地縛霊まで行ったんだからなぁ。それを浮遊霊にしてもらうぐらい、なんてことないぜ」
女「さすが私の愛する人!」
男「よせよ、照れるじゃないか。よっし、ならもう浮遊霊と言わず、守護霊まで行っちゃおう」
女「誰の?」
男「そんなの。君の守護霊に決まってるだろ」
女「きゃーッッ!」
男「よし、じゃぁさっそく行ってくるぜ」
女「うん! でも、その前に……」

女、手を広げる。男、手を前に。

男「さぁ!」

女、男にダイブしようと走り出す。

男「っあっ! しまった待て!」

女、間に合わずそのまま男をすり抜ける。どんがらがっしゃーん。

男「ごめんなさい」


完。
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