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パンドラ、フードをとる

パンドラ「僕だよ!パンドラ!」
カイ「…うそ…」
パンドラ「うそじゃないよ、ちゃんと君の目の前にいるだろ?」
カイ「でも、パンドラは…あの時…」
パンドラ「…うん。あの時、リンの家で…僕、本気で世界の消滅を願ったよ。本当に自棄(やけ)になってね。こんな世界消えてしまえって思った。
     でも、僕が消える直前、カイの声が聞こえたんだ。『平和な世界で、パンドラと一緒に生きたい』って。その思いは僕の願いよりも強かった。」
カイ「それじゃぁ…」
パンドラ「僕の力は、カイの願いを叶えた。だから、神様としてのパンドラは力を使い果たして消えちゃったけど、…人間として生まれ変わった僕は今カイの目の前にいるよ。」
カイ「…はは、そんなにあっさり言われると…なんか…何にも言えないや…」
パンドラ「あっさりだって?こっちも大変だったんだからね!!目が覚めたら一人ぼっちでだーれもいないところにいるし、人間の身体って、すぐお腹すくし、疲れるし、怪我したら治りは遅いし…」
カイ「でも、それが人間よ。弱くて、どうしようもなくバカで…それでも、」
パンドラ「それでも?」
カイ「…それでも、大切な人のためなら、何だってできる。」
パンドラ「…そうだね。…それにしても、カイ、ボロボロ…どれだけ僕を探していたの?」
カイ「パンドラだって、泥だらけじゃない。元神様が台無しよ。」

二人、おかしくなって笑い出す

パンドラ「そうだ、旅してる間に知ったんだけど、今世界中で起きてた戦争が終わりに向かってるんだって。異常気象も減ってきて、疫病も鎮まってきてるらしいよ。カイの願いは、確実に世界に届いてる。」
カイ「…そうなんだ…」
パンドラ「『平和な世界で僕と生きたい』って、カイが欲張りなお願い事するから…」
カイ「だっ…って…あ、あのときは無我夢中で…!」
パンドラ「あはは、カイって、肝心なときいつも無我夢中だよね。」
カイ「……そう、なっちゃうんだよ…」
パンドラ「?」
カイ「パンドラのことになると、すごく必死になっちゃうんだ。自分でも、
分からなかった…その理由が。」
パンドラ「どういうこと?」
カイ「あのときも…君が、どうして自分を連れて逃げてくれたのかって話したことが
あったでしょ…?あのときは、言葉が見つからなくて、…照れくさくて、
ちゃんと伝えられなかった。…でも、今ならはっきり言葉にできる。」
パンドラ「うん。」
カイ「…君が好き。」

抱きしめあう二人
音響高まる
二人は約束の地を目指して歩きだし、照明フェードアウト


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