こわい
ある日の昼下がり。

暖かい日が射す広い和室で、初老の「落語家」がうつらうつらしている。

遠くから、大量のタコを雑に引きずるような音が聞こえてくる。
部屋の襖がすらりと開く。
若い「宇宙人」が現れる。
中性的な顔で、あちこちからやたらトロピカルな色づかいの触手が飛び出ている。
お盆に湯呑みを乗せている。


宇宙人
「師匠。お茶が入りました」

落語家
「ん? ……ああ、ありがとう」


落語家、湯呑みを受け取る。


落語家
「あちち」

宇宙人
「熱かったですか? すみません!」


宇宙人、落語家の湯呑み目がけて、触手から暗い色の汁を噴き出す。
落語家、びしょびしょ。


落語家
「ありがとう」

宇宙人
「いえ」

落語家
「じゃあ、新しいの持ってきて」

宇宙人
「はい」


宇宙人、お盆を持って去る。
落語家、手ぬぐいで腕を拭く。

宇宙人、新しいお茶を持ってくる。


宇宙人
「師匠。お茶が入りました」

落語家
「はい、ありがとう」


宇宙人、軽く頭を下げて部屋から出ていこうとする。

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