『条件』
糸田…『理由』の男。
井上…『理由』の女。


糸田、井上、板付き椅子に座っている。

井上「はぁ…」
糸田「どうしたんだよ? ため息なんかついて」
井上「なんでもないわよ…」
糸田「なんでもないことないだろう」
井上「あんたには関係ない」
糸田「関係なくない!!」
井上「なんでよ! 関係ないわよ!」
糸田「関係ある!!」
井上「ないわよ! 勝手に関係してこないでよ!」
糸田「…確かに関係ないかもな。でも俺はお前と関係を持ちたいと思ってる!!」
井上「糸田…」
糸田「主に身体の関係を!!」
井上「…最低」
糸田「最低!? お前最低って言うけどな!? ホントに俺が最も低いか!?」
井上「えぇ」
糸田「そうだな。俺が最も低いな。うん」
井上「……」
糸田「…ごめんって、ふざけすぎた。…どうしたよ?」
井上「…気にしないで、ほっといて」
糸田「俺はお前の力になりたいんだよ!!」
井上「別に私は望んでない」
糸田「望んでる!!」
井上「望んでないわよ! さっきから勝手に決めつけないでよ!」
糸田「話してみろよ! 力になれるかもしれないだろ?」
井上「…無理よ」
糸田「無理じゃない!!」
井上「無理よ!!」
糸田「!?」
井上「無理なの!! あんたには何も出来ない!! …あんたじゃなくても…。何も知らないくせに力になろうとしないで!! 」
糸田「……」
井上「どうしたのよ!! 言い返してみなさいよ!! さっきみたいに断言してみなさいよ!!」
糸田「……」
井上「何も言えないんでしょ!? 他人なんてみんなそう!! みんな偽善者!! 善人ぶって近付いてきて、都合が悪くなると逃げ出すの!!」
糸田「……」
井上「やめてよ…力になるなんて…そんな口先だけの言葉…聞きたくない… 」

井上、泣き出す。
糸田、井上の頭を撫でる。

糸田「…ごめんな。確かに俺にはお前を助けることは出来ないかもしれない。お前の傷を癒すことも。…でもな、お前が1人で背負ってる重たい荷物、一緒に背負うことくらいは出来るぜ?」
井上「……」
糸田「…話してみろよ」
井上「……」

しばらくの沈黙。

井上「…落ちちゃった」
糸田「え?」
井上「第一志望だった教育大…落ちちゃった…」
糸田「……」
井上「何やってんだろうね…教師になりたくて、毎日必死で勉強したのに」
糸田「……」
井上「私じゃ教師になれないのかな…」
糸田「なれるよ」
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