兄貴の宝物庫
『兄貴の宝物庫』

登場人物

竜士(リュウジ)……敵味方問わず恐れられる極道の兄貴

テツ ……竜士の舎弟

組長 ……竜士、テツの所属する組の組長



   明転
   舞台は竜士の自宅
   竜士とテツが向かい合って座っている
   部屋にはなぜか可愛いぬいぐるみや人形が所狭しと並べられている

テツ 「どういうことッスか、兄貴!」
竜士 「何度も言わせんな、テツ。俺は堅気になって、お天道さんに顔向けできる
    ような人生を歩むんだ」
テツ 「何、腑抜けたこと言ってんスか!組長の右腕とまで言われる兄貴が組抜け
    ちまったら、お先真っ暗ッスよ!」
竜士 「すまねぇ、だが、俺の意志は変わらねぇ」
テツ 「兄貴……!」
竜士 「俺はよう、極道にゃあ向いてねぇんだ」
テツ 「今更、何言ってんスか!そんなことないッスよ!」
竜士 「最近もな、考えちまうんだよ。こんな血で血を洗うような毎日、不毛だっ
    てな……」
テツ 「それが極道のさだめってやつッスよ!」
竜士 「俺ァ、これでも昔っから小心者でよう……。血が駄目なんだ」
テツ 「何でこの道入ったんスか!?」
竜士 「むさ苦しい舎弟の世話に明け暮れ、抗争続きで夜も眠れねぇ毎日……」
テツ 「むさ苦しい舎弟って、俺のことッスか!?」
竜士 「軽く鬱入りかけたよ……。そんな時、俺を救ってくれたのが……」

   ぬいぐるみの山の方へ移動する竜士

竜士 「こいつらだ」
テツ 「……今まであえてつっこまなかったッスけど、何なんスか、それ……」
竜士 「(一番上のぬいぐるみを取る)リラックマだ」
テツ 「名前を聞いてんじゃねぇッスよ!何でそんなもん集めてんのかって
    聞いてるんス!」
竜士 「そんなもんとは何だ、てめぇ!(テツの胸倉を掴む)」
テツ 「ひぃぃ!す、すんません!」
竜士 「(離す)俺のトメ吉を馬鹿にすると、タダじゃおかねぇぜ」
テツ 「トメ吉!?」
竜士 「ああ。こいつら全員、俺の大切な家族だ」
テツ 「兄貴!お願いだから目を覚ましてくだせぇ!どうしちまったんだ、
    アンタ!」
竜士 「どうもこうもねぇよ。俺はただ、こいつらに救われた。それだけだ」
テツ 「いや、全然わかんねぇッス!何があったんスか!?」
竜士 「俺がむさ苦しい舎弟と抗争で鬱になりかけていた時……うちに
    吾朗が遊びに来てよぉ」
テツ 「誰ッスか、吾朗って」
竜士 「近所のおばちゃんの息子だ。今年で7歳になる」
テツ 「7歳……!?7歳のガキんちょが、普通に……!?」
竜士 「吾朗には2つ下の妹がいてな。そいつが、ぬいぐるみを集めててよう」
テツ 「…………」
竜士 「落ち込んでた俺に……てめぇの大切なぬいぐるみ、譲ってくれたんだ
    ぜ……。健気じゃねぇか……。認めたくねぇけどよ……目から汗が
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