Vampira
Vampira(ヴァンピーラ) ver.0.8β  作:白神貴士

嚢(心療内科医)
如月(不倫作家)
レイ(病む愛人)
WILL(三浦按針)

捜査員1
捜査員2
捜査員3
捜査員4
刑事1
刑事2

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 胸に杭が刺さっている
 左の乳房の内側に盛り上がった肉をまといつかせて
 叩かれて頭が割れ潰れた丸木の杭が
 10センチばかり頭を覗かしている
 「これがあったから・・」
 ぴったりと
 あの人の胸に抱きとめてもらうことが出来なかったのだ
 ようやく納得できた私は微笑んだらしい
 打ち込まれ
 余程血が噴き出したものか
 杭はどす黒く染まり
 何処かで見た仏像のような光沢さえまとっている
 古い物には違いない
 が、今
 私はその杭を伝った液体が
 落下して陰毛を揺らすのを感じた
 指にとって顔に近づけると
 つんと鉄錆の臭いがした
 血だ
 背中の方がもっと酷いのか
 合成樹脂の椅子と剥き出しのお尻の間がぬるぬるしている
 背中に手を回すと
 こちらも10センチばかし杭の尖端が突き出して
 血がドーナッツ状の瘤になった傷口から垂れている
 痛みが
 貫かれているはずの心臓から
 どくどくと湧き上がってくる
 
 どうして忘れていられたのだろう
 この痛みを
 どうして
 
 背中の杭がつっかえて椅子にもたれることができない
 辛いよう
 どんどん胸が苦しくなってくる
 顔から血の気が引き
 さーっと体温が下がっていくのがわかる
 血が止まらない
 この傷は生きているんだ
 生きて"ここ"にあると叫んでいるんだ
 血が止まらない
 私を嫌って
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