とある劇団の実話談議
とある劇団の実話談議(リアルトーク)


登場人物:男 /ナガミ
     女 /アイダ
     
     監督

     ナレーション(声のみ) /脚本家

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 (「語尾」の男女と監督。)
  マンガなんかでよくある、漢字に片仮名のルビを振ったような読み方。
  しかし音声媒体やら、むしろ舞台ではそれこそ訳がわからないだろう。

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  なにかの映画撮影だか、舞台の稽古だかのワンシーン。

  男と女が向かい合って立っている。
  セリフは全て(  )の中の読みで発せられる。


ナレーション「これは、とあるコント劇団で繰り広げられた、実話を元にした物語である。」


男「アイダ、お前もうおもしろいことすんなよ」

ナレーション「ナガミはにべもなく言った」

男「お前の「創造性(クリエイティブさ)」には感服してるよ。だがな、お前達役者は「歯車(コマ)」に過ぎないんだぜ?
 「役者(オマエ)」にとって脚本はただの設計図に過ぎないんだろうが、「演出家(オレ)」にとっては完成品なんだぜ?
  それをいちいちお前さんの「創造性(そうぞうせい)」で「破壊(コワ)」されたんじゃ、たまったもんじゃねえぜ?
 「役者(オマエ)」が努力すればするほど、それは不正解だ。俺はお前のすごさは認めているさ。
  だがな、俺が欲しいのは生み出す「個性(オリジナリティ)」じゃねえ、「任務(ダイホン)」を忠実にこなす「能力(アビリティ)」だ」

ナレーション
「アイダは閉口するしかなかった。そもそもの認識が違い過ぎたのだ。
 芝居と、コントと。
 彼女自身、これを芝居として作っていたのだ。恐らく、他の役者達も同じだろう。
 「創造(つく)る」な? ふざけるな、だとしたら何の為の役者だ。何の為の演出だ。
「脚本(うつわ)」に縛られろだと? 冗談じゃない。本当に「俳優(ワタシ)」の「存在意義(そんざいいぎ)」がそもそも失われてしまうではないか!」

男「もう一度言うぜアイダ? もうお前は作り込むな。おもしろいことを言うな。
  やるな。これは「演劇(モノガタリ)」じゃねえ、「コント(システム)」なんだ。「役者(オマエら)」の快楽なんか知らねえ。機械的に、笑いを取ってりゃいいんだよ」

ナレーション
「彼と彼女の間にこうした行き違いが生まれたのは不幸な必然である。
 「演出家(カレ)」がやりたかったのは「仕組み(コント)」、「役者(カノジョ)」がやりたいのは「感情の開放(エンゲキ)」なのである。
 決定的な意識の違い。それが「とある劇団(えんげきぶ)」にとって良い事なのか悪いことなのか、それは未だわからない。
 少なくとも感情の込もっていない「作品(コント)」の製作になど、彼女は関わったこともなかったのだ。」

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監督「カット! いいねえ。最高の演技だったよ」
女「監督、ありがとうございます」
監督「すばらしい演技だったよ!」
女「監督、ありがとうございます」
 男「・・・あのお・・・」
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