Mother Mother Mother (15分)
    爆撃機が上空を通過していく音がする。
    
    町の中の古びた佇まいの民家。
    扉を開けて、女が入ってくる。手には銃が握り締められている。
   
女  …。(荒れた息遣い)

    息を殺して部屋の中を見渡す女。
    人の気配がないか探っている。

女  …。(溜め息)
    
    部屋の隅に座って俯く女。
    疲れが出たのか、しばらくしてまどろみ始める。

    間。

老婆 …。

    奥に潜んでいた老婆が女に近付く。
    女が気付く。

    老婆も銃を手にしている。
    
女  …。
老婆 …。

    均衡状態。

    老婆が先に銃を下ろす。

老婆 何処から来たの。
女  …。
老婆 逃げて来たんだろ?
女  …。
老婆 話したくなければいいよ。
女  …エアフルト。
老婆 あぁ、クレーマー橋だ。行った事があるよ。良い町だね。
女  ええ。
老婆 って事は、二十キロくらいか。何処まで行くの?
女  イェーナ。親戚がいるから。
老婆 そうかい。無事に行けると良いね。
女  あの、
老婆 何?
女  ここはあなたの家?
老婆 そうだよ。空き巣に見えたかい?
女  そうじゃないけど…。ここもそんなに安全な場所じゃないって聞いてたし、町に
   も全く人影がなかった。 
老婆 私は居たくてここに居るんだ。世の中こんな状態なら、せめて死に場所くらい自
   分で選ぶよ。
女  …。
老婆 別に後ろ向きな気持ちじゃないんだ。家に居たいだけなんだ。
女  あの、もし良かったら…。
老婆 ウチは宿屋じゃないよ。
女  …。
老婆 だから上質なおもてなしは期待しないでおくれ。それでも良ければ。
女  ありがとう。
老婆 宿代は…。
女  ごめんなさい。お金はもうそんなに…。 
老婆 冗談だよ。もらっても使う機会がないさ。爆弾の降る町へショッピングに出掛け
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