ハナ・ハナ・ハナ
【登場人物】
   
てっちゃん:三宅政人(みやけまさひと)25歳
    このサーカス団の看板ピエロ。サーカスの司会進行を担当。ただ、愛用の赤い鼻がないと簡単なジャグリングすらできなくなる。
    小さい頃に行ったサーカスで迷子になったところ、ピエロに遭遇。何も言わずに親の下へ連れて行ってくれたピエロに憧れ続けている。
    現在彼が使っている鼻は、見習いになった日に師匠からもらった大事なもの。迷子を助けてくれたピエロの鼻の印象が強く、こういう鼻を持っていれば大丈夫、という安心感が生まれる。それが、鼻への依存につながっている。ようするに、ただの思い込み。
    最近は、サーカスの司会などもやることになって、どんどん自分の責任が増えていく。団長の信頼を裏切らないよう頑張ろうと技の習得などに一生懸命になるあまり、余裕がなくなってきている。しかもその所為で団長から「たるんでる」とか言われるので、更に逼迫して、一杯一杯。そして真っ先に削られたのが、ピエロとしての「常に人を楽しませる」ことへの情熱。だが、ラストの華香の独白で靄が吹っ切れる。
    ピエロになる、と言った時、親に猛反対を食らったので、団長の言い分も分かるが、それに反発したい華香の気持ちもよく分かる。
    元々気負いやすい体質で、優しい性格から、何か頼まれると断れない。責任感も強いが、それ以上に気が弱いので、緊張や苦悩などですぐに腹を下す。キク科の花にアレルギーがあり、花粉を吸い込むとくしゃみや鼻水が出る。
   
ノリさん:辰見五郎(たつみごろう)26歳
    サーカス団の兄貴的存在。常に一歩引いた所から全体を見回す傍観者に徹する。楽観主義者。何も考えてない風に見えるが、実は頭良く、たまに正論を言いだす。意外と読書家。てっちゃんとは高校時代からの友人。「ノリさん」は、てっちゃんが付けた名前。もちろん、ノリタマを常に携帯しているから。
    「ノリタマ」さえあれば生きていける。部屋には「ヘソクリ」と言う名のノリタマが沢山隠されている。ただ、ずっと隠してあるので、消費期限切れして久しい。料理当番は全員に回っていたのだが、料理に全てノリタマが掛かっているので、現在、彼だけは当番から外されている。料理の腕前はもはや上手い下手で測れるレベルじゃない。
   
華香:奥村華香(おくむらはなか)16歳
    てっちゃんに師事する見習いピエロ。団長とミッキーの一人娘。明るく、サーカス団員にとっての癒し的存在。
    ミッキーとは友達みたいな関係。移動サーカス故、引越しが多いので、短時間に人と親密になるのが上手。何かと干渉してくる父に対して多少の不満もある。
    密かにてっちゃんのことが好き。ピエロになった理由の30%は彼への憧れから。
   
ジョーイ:飯田城一郎 22歳
    猫科専門の猛獣使い。ネイティブアメリカンの血が流れていると本気で思っているので、本名を呼ぶと怒る。
    一年アメリカに留学して猛獣の扱いを勉強し、帰国。たまたま立ち寄ったこのサーカスで、レイチェルの勇士に一目ぼれ。その日のうちに入団、実力も申し分ないが、幾分獣に対して入れ込みすぎる。心の支えである愛虎レイチェルが捻挫で入院した為、相当ネガティブになっている。
   
   
団長:奥村善之(おくむらよしゆき)40歳
    サーカスの団長。みんなの親父的存在。だが、ミッキーには頭が上がらない。両親もこの移動サーカスの団員で、生まれた時からサーカス社会にいる。年上・経験者の言うことは絶対である年功序列社会の中、実力で上へ這い上がろうと、小学生の頃、マジシャンから空中ブランコへ転向。その選択が功を奏し、高校生の時からステージに立つ。30の時、団長になる。
    男所帯に咲いた一輪の花である娘にゾッコン。リーダーとしての素質はあるが、華香のこととなると冷静な判断ができなくなる。
    猫が大の苦手。ただ、虎やライオンなど大型なら大丈夫。
    動揺すると読経するのは「心を静める際には般若心境を詠め」という僧侶であった祖父の教えから。
   
ミッキー:奥村美樹 37歳
    面倒見が良い、サーカスの肝っ玉母ちゃん。掃除が趣味。さばけた性格で、細かいことは気にせず、とっとと忘れる。
    全然関係ない話を唐突に始める、とんでもKY嬢。だが勘は鋭く、侮れない人。
    海沿いの民宿生まれで、その頃から世話好き。人見知りと言う言葉を知らず、会った人はみんな友達。
   
   
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        ハナ ハナ ハナ
   
   
   
   
   
        #1
   
        ○明転
        ここはサーカス団の控室。
        舞台中央にソファが一つ。脇には机が置かれている。
        そのソファでくつろぐノリさんと華香。ノリさんは舞台衣装。
   
MC   「これより休憩をとります。てっちゃんとはまた二十分後にお会いしましょう」
   
        下手から、ピエロの恰好したてっちゃんが入ってくる。
   
ノリさん  「お疲れさん」
華香   「お疲れ様です。今日も絶好調ですね」
てっちゃん  「いやあ、今日のお客さんは温かいよ。マシュマロでジャグリングして、二、三個食べても笑ってくれた」
ノリさん  「おお。そりゃ、期待できそうだ」
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