脚本ダウンロードサービス

タンシンフニン

タンシンフニン　　　　　　　　　　　　　　　　　大沢ケイト

◎登場しない人物

一幸（カズユキ）……一家の主。里子の息子。美那子の夫。（５２）弱小専門商社勤務。

◎登場する人物

里子（サトコ）（７５）一幸の母。一幸と美那子夫婦と同居している。

美那子（ミナコ）（５０）専業主婦。週に一、二回パートに出ている。

希美（ノゾミ）（１６）一幸・美那子夫婦の長女。高校二年生。

佑太（ユウタ）（１４）一幸・美那子夫婦の長男。中学二年生。

◎時間

十一月。日曜日の昼間。

◎場所

一幸・美那子夫婦の家の居間
居間にはソファとその脇に小さな机が置いてある。
ソファの反対側には、アイロン台とアイロン、それに洗濯物が入ったカゴが置いてある。

その居間で、里子と美那子がにらみあっている。

長女の希美が入ってくる。

希美　　　（おねだりするように）ママ〜。ママママ。お話があるんやけど。

美那子　　おかえり、希美。

里子　　　おかえり、希美ちゃん。

希美　　　二人ともなにしてんの。

美那子　　なにって見ればわかるやろ。おばあちゃんとおハナシしてんねん。ねえ、お義母さん？

里子　　　そやで。友好的な話し合いや。友愛や。

希美　　　友愛？　どっちかっていうとヘビとマングースの戦いに見えんねんけど。
　　　　　まあ、ええわ。なあ、ママー。定額給付金（*注１）ってどうなったん？　

美那子　　定額給付金？　いきなりなんやの。

希美　　　あれってあたしの分もあるんやんなあ？
　　　　　まだ、もろうてへんねんけど。

美那子　　そんな古いこと忘れたなあ。　ええ〜と、…ああ、そうそう、おばあちゃんにあげてん。

里子　　　もろうてへんわ！

美那子　　すぐ忘れて〜

希美　　　（美那子に）返してよ、あたしの定額給付金。ダーリンと（*注２）ひらパーに行くんやから。

1/8

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！