Alma
アルマ・マーラーとオスカー・ココシュカ
"Alma"  ver.0.8β
CIRQUE DE BLANCA #2 MAIN ACT

作・白神貴士

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人形のシーレが浮かび上がる。

シーレ
「1918年10月…妻のエディットがお腹の赤ちゃんと一緒にスペイン風邪で死んじゃった。
 その三日後に…僕もスペイン風邪で死んだ。
 まだ28歳だったのにね。
 それからはずっと此処に座って昔の想い出と戯れたり
 昔の知り合いがどんな人生を送ってどんな老人になっていったのかを眺めてたんだ。
 芸術の都ウィーン…僕の夢と野望の舞台…
 そこにはクリムトがいてココシュカがいて見たこともない画を描いていた。
 シェーンベルグがいてマーラーがいて聴いたこともないような音楽を奏でていた…
 あんな街は他に無かった…どの国にもどの時代にも… 
 そうだ…今日はみんなにアルマとココシュカ…
 アルマ・マーラーとオスカー・ココシュカの話をしよう。」

シーレの「死と乙女」、ココシュカの「風の花嫁」が活人画で浮かび上がる。

シーレ
「ココシュカは僕を嫌ってたという人もいる…でも僕は彼が好きだったんだ。
 彼の画はとても刺激的で素敵だったし
 彼の『風の花嫁』にヒントを得て、この画を描いたくらいだもの。
 でも…あれは彼にとって特別な作品だったから…
 彼の一途な恋を僕が茶化したように思われたのかも知れない。
 『風の花嫁』に描かれていたのはココシュカとアルマ…
 アルマ・マーラー…ウィーンが生んだ不世出の音楽家マーラーの
 恋多き未亡人…美しきミューズ!」

シーレと活人画消える。
浮かび上がるのは、クリムトと「接吻」のポーズでキスをしているアルマ

アルマ
「初めて本物のキスをした相手は画家のグスタフ・クリムト…彼が35歳で私が17歳…
 でもそれを日記に書いたのが間違いだった…母に見つかってしまったの…」

クリムトと引き離されたアルマ、ピアノの前に座らされる。
楽しげにピアノを弾くアルマ。
だが、そのピアノ教師もまたアルマを胸に抱いて…

アルマ
「音楽家のツェムリンスキーは私の才能を認めてくれた…そして私に夢中…
 最後の一線の手前まで、私たちはあらゆる事を楽しんだ…
 でも彼は貧しくて醜かったの…」

アルマ、ズボンを下ろそうとしているツェムリンスキーの前から逃げ出して…
そこへ立ちふさがった男…手紙をアルマの服に押し込む。
次から次へと…服に入り切らなくなったら脱がせて下着の中へも。

オーケストラが流れる。

男、さっと客席に向かい指揮棒を振る。
曲を凄まじい早さで演奏し終えて向き直り、巻紙をアルマの顔に巻いてしまう。
取り外した下着の下から現れた彼女のポストに、
ズボンから取り出したラブレターをゆっくりと差し入れる。
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