鬼退治(強盗殺鬼)における桃太郎一味の残虐性に関する考察
『鬼退治(強盗殺鬼)における桃太郎一味の残虐性に関する考察』


 周囲には鬼の死体が転がっている。
 辺りは血の海。

 桃太郎達の足下には財宝が転がっている。

 桃太郎、呆然と立ち尽くしている。

 イヌ、鬼の死体を蹴り飛ばす。

 サル、財宝を愛でながらいやらしく笑っている。

 キジ、煙草を吸いながら辺りを見渡して、

キジ ちょろいもんだな。
イヌ 鬼っていっても、図体がデカイだけで、大したことなかったっすね。


サル (財宝を見せびらかして)見てみろよこれ。相当な値打ちものだぜ? 売ったらかなりの金になるぜ。
イヌ へへへ……すごいなこりゃ。

モモ あのさあ、
サル なんすか?
モモ お前らさあ……やり過ぎだよね、これは。
イヌ どういうことっすか?
モモ いや、ここまでしなくていいよ……。殺しちゃマズイでしょ、さすがに。僕らは正義の味方だよ?
キジ いいじゃないですか。こいつらは悪いことしたんですよ。裁かれて当然ですよ。
モモ いや、でもさあ、いくらなんでも、ひどいよこれは。鬼退治なんて生易しいものじゃないよね? 惨殺だもの、これは……
イヌ いやいや、鬼退治じゃないっすか。
サル やらなきゃ、こっちがやられてたんですよ?
モモ いや、そうかも知れないけどさあ……。これは殺すとかそんなレベルじゃないよ……ぶっ殺してるよ……
キジ 桃太郎さん、これだけは言わせて下さい。僕たちは、とても良いことをしたんですよ――
モモ (被せるように)うーうん、うーうん。(と、首を横に振る)
モモ あのね、鬼退治って言っても、ちょっと鬼をこらしめてやろうって、それくらいの気持ちだったのにさあ。
イヌ いやいや、桃太郎さん、そんな甘いこと言っちゃダメですよ。鬼は悪い奴なんですから、ぶっ殺さないと。
モモ いやいやいや、殺さなくてもいいでしょ!
サル まあまあ、過ぎた事を言ってもしょうがないじゃないですか。
モモ サルくんはまだいいよ……引っ掻く、とかかわいい攻撃だったからね。イヌとかはさあ、もう食い殺してたじゃん……やめようよ、ああいうことはさあ。
イヌ だから過ぎた事を言ってもしゃーないじゃないっすか。
モモ キジもさあ、クチバシで目玉抉るかなあ? 酷いよね、やることが。一番えげつないよ。
キジ いやいや、桃太郎さんだって刀で切り殺してたじゃないですか。僕が目を潰した鬼を。後ろから。卑怯ですよ? 普通はそんなことしないでしょう。仮にも正義の味方なのに。
モモ だってそれは、危なかったから……
キジ 正当防衛ですか……ま、いいんじゃないですか? 自分だけ綺麗なところにいたいっていうのも。
モモ とにかく! 早く引き上げようよ!
キジ 無かった事にするつもりですか……
モモ そうじゃないよ。そうじゃないけどさあ。
キジ お前らー! 撤収だってよー
二人 ういーっす。

 財宝をかき集め始める三人。

モモ え、え? 君たちさあ、何やってるの……?
イヌ え? 何って、戦利品を、ねえ?
サル やっべ、この金(きん)ってば上物じゃんよ。こりゃめっちゃ金(かね)になるぜ。
キジ 鬼共め。弱っちいくせに、これだけの金銀財宝を庶民から強奪してたなんて、なんて太え野郎共だ。
   おいお前ら、向こうにもあるぞ。
二人 へい!
モモ ちょっと待とうか。
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