ボランティア好き
『ボランティア好き』

作 蒼空 白龍


登場人物

おじいさん
おばあさん
死   神
男 の 人


          
          部屋の中におじいさんが独り寝ている
          咳き込んで、そこにあるお茶を飲もうとするが、入っていない
          そこへおばあさんが入ってくる

おじいさん  ちょうどよかった。ばあさん、そのお茶を入れてくれんかね。
おばあさん  はいはい。

           おじいさんにお茶を入れる

おじいさん  ありがとうな。
おばあさん  おじいさん、今日何の日だかわかりますか?
おじいさん  さあ、何の日だったかな?
おばあさん  今日は私たちの結婚記念日ですよ。
おじいさん  そうか、結婚記念日か。よく覚えていたね。
おばあさん  ええ、結婚記念に二日市温泉に行ったの。昨日のことのようですねえ。
おじいさん  ああ、あれは三年前だったな。あの後すぐ病気で寝込んでしまって、そのまま
       寝たきりになってしまった。おまえにも苦労かけるなあ。
おばあさん  何言ってるんですか、おじいさん。また行きたいですねえ、温泉に。
おじいさん  また行きたいなあ。

          派手な音楽が流れて、死神が出てくる

死神     お迎えに参りました。
おばあさん  おじいさん、どちらの方ですか?
おじいさん  しらんなあ。
死神     私は死神。人を黄泉の国へと導くもの。さあ、私と一緒に参りましょう。
おばあさん  これはこれはよくいらっしゃいました。
死神     え?
おばあさん  頼んでたデイサービスの方ですね。
おじいさん  ご苦労様です。
おばあさん  しかし死神とはまたけったいな名前のデイサービスですね。
死神     いや…あの…。
おばあさん  お風呂もあるんですよね。
死神     …うちにはありませんが。
おじいさん  そうか。
おばあさん  残念ですね、ないのですか。
おじいさん  楽しみにしていたんですが。

          二人、すごく落ち込む

死神     …なんならこちらでお手伝いいたしましょうか?その方が心残りなく連れて
       行けそうですし。
おじいさん  え?うちで入れてくれるんですか?
おばあさん  まあ、助かります。年よりひとりの力ではなかなかお風呂もままならないで
       すから…。本当に助かります。

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