ライオン
『ライオン』

登場人物

卯月…主人公。恋人を亡くす。
獅郎…卯月の恋人。画家。


明転。ダンボール箱に荷物を入れる卯月。
荷物の一つであるスケッチブックを持ち、中身を見る。
卯「懐かしいなぁ、これ…。」
スケッチブックを見ながら、微笑む卯月。
卯「風景画、静物画、人物画…全部得意だって言ってたっけ。」
卯「ホント、絵に関してだけは自信家なんだから…。」
暗転。


明転。(できるだけ短時間で)
椅子に座って絵を描く獅郎が登場。
獅「ははは、これだけが俺の取り柄だからね。」
卯「いつもは気が小さいくせに。」
獅「そう…?穏やかな性格って言ってほしいな。」
卯「ふふ…はいはい。」
獅「うんうん。そのままでいてほしい。」
卯「…?何が?」
獅「笑顔の方が似合ってる。描いてる方も楽しいしさ。」
卯「そ、そう…。っていうか、そんなこと真顔で言わないでよ…恥ずかしい!」
獅「本当のこと言っただけだよ。ほら、笑って笑って。」
卯「………。」
しばらく絵を描き続ける獅郎。
獅「…ねぇ、卯月。」
卯「ん?」
暗転。


明転。獅郎の姿は見えず、卯月がスケッチブックを見ている。
卯「『この絵が完成したら結婚しよう』…そう言ってくれたよね。」
卯「気が弱くて、優柔不断で、頼りなくて…。でも、誰にでも優しくて、努力家で、約束は守る…。大好きだった。」
卯「あなたが約束を守ってくれなかったのはこれが初めて…。ううん、獅郎のせいじゃないのはわかってる…。わかってるけど…。」
スケッチブックを眺め、寂しげに笑う卯月。スケッチブックをその場に置き、再び荷物を片付け始める。その途中、うさぎのぬいぐるみを手に取る。
卯「これは…。」
暗転。


明転。獅郎が登場。スケッチブックを見る卯月。
卯「…ライオン?」
獅「うん、そう。俺の好きな動物。」
卯「へぇ、そうなんだ…。名前も関係あるの?獅郎の獅って、獅子の獅よね。」
獅「うん、だからこの名前、気に入ってるんだ。」
卯「何でライオンが好きなの?」
獅「ほら、ライオンって言えば、百獣の王だろ?強くて、でもどこか気品みたいなものがあって。カッコいいじゃないか。」
卯「ライオンねぇ…。獅郎のイメージには合ってない気がするけど…。」
獅「そ、そうかな…。」
卯「どっちかと言うと、猫って感じね。」
獅「ね、猫……。(落胆)」
卯「可愛くていいじゃない?」
獅「可愛いねぇ…。複雑だよ。」
卯「そう?」
獅「卯月の卯はさ、うさぎって意味だよね。」
卯「そう言われれば、私にも動物の名前が入ってるね。」
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