アットホーム
アットホーム
 
伊集院憲明・・14才 盲目の少年 資産家伊集院孝憲の長男、
戸塚 勇雄・・66才 駅を住処にするホームレス、元この駅の駅長
朱美 ・・・・35才 勝俣のスナックで働くホステス、惚れっぽく、恋にのめり込む
雅夫 ・・・・25才 勝俣にあこがれるチンピラだが、未だ両親と一緒に暮らしている。
向坂 ・・・・44才 伊集院家の庭師、憲明の親代わりだと思っている。独身
青柳 ・・・・48才 東署の刑事、町のチンピラから金をむしり取る悪徳刑事。
真弓 ・・・・33才 元タカラジェンヌを目指し夢破れた女。朱美の後輩。
(ママ) 朱美の二役 憲明が2才の時に屋敷に捨て子同然に置き去りにしたとされる女。
(勝俣) 本作に登場しない。このあたりを仕切っている渡世人。

第1場 廃駅
廃線になった駅のホーム。舞台奥は駅の待合所になる。下手にはすりガラスの窓があり待合所へと続く通路がある。ベンチが数個無造作に置かれているほか、設定上手頃なテーブルが置いてある。手前のベンチには憲明少年が座っている。ベンチの隣には車椅子。ところどころスプレーでいたずら書きがある。

奥から戸塚がケーキを持って鼻歌交じりに登場。
テーブルにラジカセとケーキを並べる。

戸塚 今宵久方振りに君に出会わん。おめでとう。マリア。(このとき飛行機事故の載った新聞をベンチに広げている)

ラジカセのスイッチを入れると曲が流れだす。
老人は一人踊りだす

戸塚 メリークリスマス!
憲明 メリークリスマス!

戸塚あわててラジカセを止める。不審な様子で少年をみている

憲明 (正面を向いたまま)いい音楽だね。もっと聞かせてよ。
戸塚 誰だ?
憲明 僕は憲明。あなたは?
戸塚 ・・・・・・(不審な思いはぬぐえないが素直に)戸塚勇・・・・ここで何してる?
憲明 (それを無視し)あなたはおじいさん?
戸塚 子供か?ここは誰もいないはずだ。ここで何してる?
憲明 待ってる。
戸塚 何を?親か?
憲明 おじいさんは、なにしてるの?
戸塚 何って・・・・パーティーだよ。パーティー。ララララ〜
憲明 へえ。楽しそうだね
戸塚 楽しいさ。ここは自由だ。そうだ。君にもここにいる権利がある。わしにも歌う権利がある。ここは自由な楽園だ。ララララ〜(再びラジカセをつけようとするが)
憲明 ここは駅だよ。
戸塚 そうだここは自由の楽園駅だ。今日のパーティーには君を招待しよう。さあ一緒にケーキで祝おう。さあおいで
憲明 何を祝うの?
戸塚 ワシの妻の誕生日だ。
憲明 じゃあ、メリークリスマスじゃないよ。ハッピーバースデーだよ。
戸塚 いいんだよ。そんなことは、さあおいで
憲明 それに今は6月だよ。
戸塚 そうだ、今日6月24日こそわが妻の誕生日だ。メリークリスマス
憲明 メリークリスマス。
戸塚 さあ、ケーキを食べよう。一緒に今宵の出会いを祝おうじゃないか(ケーキを広告にのせ少年に渡そうとする)ほら、フォークは無いが。手づかみでいいだろう。
憲明 (少年は受け取ろうとするがうまくいかない)
戸塚 君は・・・・目が?
憲明 ・・・
戸塚 そうか・・・・(少年にケーキを持たせ)ほらうまいぞ。賞味期限から、ほらまだ2日しか経ってない。
憲明 ありがとう。
戸塚 (手づかみでケーキを食べながら)ちょっと硬いな・・・大丈夫・・喰え。・・・君はなぜ・・・その目が・・・・ああ、まあいいここは自由な楽園だ。目的も理由も関係ない。
憲明 ララララ〜
戸塚 そうだ、その調子だ。ララララ〜

店から抜け出して駅へとやってきた朱美が上手より登場。
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