天気輪の森の物語
『銀河鉄道の夜』へ
「天気輪の森の物語」・・・『銀河鉄道の夜』へ・・・
                         作 結城 翼
                               

              
★キャスト
少年・・・・・・
看護婦・・・・・
         

 

Ⅰプロローグ 

紅い靴を履いた看護婦が絵本を読んでいる。
窓があり、椅子に少年が座っている。幸福そうだ。だが、よく見ると、それは幸福な少年ではなく、訳もなくほほえんでいる老人にすぎない。

看護婦:人はいつか壊れるものだとその人は言った。ゆっくりと七日掛けて人は壊れて行く。まず一日目手が壊れ、次の日に足が壊れて動けなくなってしまう。三日目に鼻が利かなくなり、四日目には目が見えなくなる。五日目には耳が壊れ、六日目には口が壊れて、、最後の七日目に、最後の日に頭が壊れて、そうして、人はすべてが壊れてしまう。壊れたらどうなるの。どうもなりはしない。壊れるだけだ。どうして。その人は微かなほほえみを浮かべてこう言った。人は壊れて行くときに七つの物語を作るだろう。そうしてすっかり壊れてしまった後・・・

ぱたんと本を閉じる。

看護婦:おきてもいいころよ。

そうして、物語が始まる。

Ⅱ一日目 

看護婦:一日目、検温。

明るくなった。
老人が椅子に座っている。見た所はまるっきり少年だ。
看護婦が検温して、記入している。

看護婦:(体温計を振りながら)歩いてみる?
少年 :ああ。
看護婦:大丈夫?
少年 :うん。調子いいよ。
看護婦:外でも見る?
少年 :ああ、ぼく外を見よう。

看護婦、窓を開ける。
光が入ってくる。

看護婦:よく、晴れたわ。・・ごらんなさい、汽車が通るわ。
少年 :ああ、汽車が通っている。

汽笛が遠くなる。
何かを思い出しそうになる。

看護婦:どうしたの?
少年 :汽車が・・
看護婦:そう、汽車よ。
少年 :ああ、わからない。けれど。
看護婦:よく乗った?
少年 :ああ、よく乗った。
看護婦:もう一度乗りたい?
少年 :・・ああ、もう一度乗りたい。

看護婦、窓を閉めながら。

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