秋の気配
 秋の気配   中島清志 作
      
【登場人物】♀朝日幸美(あさひ・ゆきみ)・・・高校3年生。           
      
      ♀皆川詩(みながわ・うた)・・・・幸美の小学校時代の同級生。    

     花火大会の夜。
     日の長い夕刻だが、そろそろ夕闇が迫っている。
     縁日のような出店がいくつか。
     高校の制服を着た少女がたこ焼きを焼いて出店の準備をしている。
     皆川詩である。
     他の店や付近に人の気配はない。
     違う高校の制服を着た少女が下を向きトボトボと歩いて来る。
     朝日幸美である。
     少し離れた石段に座った幸美は、かばんから何か紙を取り出すとそれを見ながらため息をつく。
     たこ焼きを焼き終えて包み紙におさめた詩がやって来る。                       

 詩「・・・ちょっと、そこ(私の席なんだけどな)」                

幸美「あ、ごめんなさい。」                            
                                       
     幸美が横へどくと、詩はどかっとウンコ座りになってタバコを取り出し火をつけて吸い始める。

 詩「何だよ。」                                 

幸美「いえ、別に。」                               

 詩「けっ!」                                  

幸美「あ。」                                   
                                        
     詩は不機嫌そうにタバコの吸い殻を付近の木の立て札?に投げつける。
     幸美、立ち上がって吸い殻を取りに行こうかと迷った末、次のタバコを取り出そうとしている詩をじっと見てしまう。  
                                       
 詩「何ガン飛ばしてんだ、お前。」                        

幸美「あ、いえ・・・
   皆川さん?」                         

 詩「え?
   もしかして・・・」                           

幸美「やっぱり。
   朝日です。
   小学校で一緒だった。」                 

 詩「覚えてるよ。
   何だゆっきいか。
   お久しぶり。」                 

幸美「何やってんですか、こんな所で。」                      

 詩「いや、ちょっと・・・
   ゆっきいこそ何やってんの?」              

幸美「ああ。
   塾の帰りなんですけど。」                       

 詩「塾?
   もしかして受験生とか。」                        
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