雑貨店うずら花嫁日記
【雑貨店うずら花嫁日記】

作/スラッシャー松井

◆登場人物◆
店長    (女 29)
新入社員  (男 26)
女社長   (女 33)
花嫁    (女 23)
タタリジャー(男 26)
配達員   (女 20)



◆第一場◆

      雑貨店うずらのスタッフルーム。
      倉庫を改修したもので壁や床は若干ボロボロ気味である。
      部屋の正面に売り場などへ通じる出入り口。
      両脇には書類を入れるキャビネットと来客用の茶碗やお菓子などが入った小さな棚。
      期限の切れた商品や空のダンボール、宣伝媒体などが部屋のあちこちに乱雑に置かれている。
      奥には業務机が置かれており、パソコンと電話が置かれている。
      部屋の中央にはソファとテーブル。椅子が数脚。

      スタッフルームの中ではテレビの特撮ヒーローのような格好をした男と、台本を手に持った新入社員が立っている。
      店長は台本とメガホンを手に椅子に腰掛けて二人を見ている。店長の足元にはラジカセ。
      タタリジャーのテーマソングが流れる。

タタリ 「ぐはははは! 俺様は惑星ヤッツァーカから来たノロイ戦隊タタリジャー! 人間どもの悪意を全部吸い取りにやって来たぜ!
     人間どもの悪意ってのは格別に美味いからな〜。病み付きになっちまうぜ! さぁ〜て、まずはどいつの悪意から吸い取ってやろうかな〜」
新入社員「(棒読みで)おやめなさいタタリジャーよ」
タタリ 「誰だ!?」
新入社員「(棒読みで)私は地球の守護神“阿弥陀如来”。タタリジャーよ、おとなしく成仏するのです」
タタリ 「へっ! 出やがったな生クソ坊主! 冗談じゃねえや! こちとら悪意を吸い取るのが楽しみなのに、成仏なんてしてたまるかよ!」
新入社員「(棒読みで)人間は悪意を吸い取られると善と悪のバランスが崩れ死んでしまうのです」
タタリ 「ウソをつけ! 人間の悪意を利用して変な宗教に勧誘させるのがお前らの狙いだろう! だから人間の悪意がなくなると困るんだ!」

      台本を見て自分の台詞を探している新入社員。

店長  「三ページ。真ん中。「やれやれ」」
新入社員「ああ、はいはい。え〜…(棒読みで)やれやれ…どうやら話しても無駄なようですね。
     仕方ありません。それでは実力行使でいかせてもらいますよ」
店長  「ちょっとストップ。(新入社員に)あのさ、内田君、もうちょっと感情込めて台詞を読んでもらえないかな?」
新入社員「感情?」
店長  「え〜と、何て言ったらいいのかな…もっとこう、強弱をつけて読んで」
新入社員「(強弱をつけて棒読み)それでは実力行使で行かせてもらいますよ」
店長  「……ま、まぁいいや」
タタリ 「おう上等じゃねえか! 俺も暴れたくてウズウズしていたところだ!」
新入社員「(強弱をつけて棒読み)身の程を思い知るがいい」
店長  「はい、ここで効果音と共に袖から阿弥陀如来の武器が投げ込まれる!」

      長ネギを新入社員に向かって手渡す店長。
      長ネギを受け取る新入社員。

タタリ 「行くぜ! タタリジャー奥義・丑の刻参りビーム!」
新入社員「(強弱をつけて棒読み)なんの。南無観世音菩薩ハリケーン!」
店長  「ここで激しく技がぶつかり合う効果音!」
新入社員「(棒読みで)ぐわあ」
タタリ 「どうだ。俺様のノロイの味は?」
店長  「もっとベロとか出して、悪い感じを出して」
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