雨の寂
『雨の寂』

■登場人物

浜野鈴女 (はまのすずめ・♀・22歳・川越藩家老の娘)
水木太朗 (みずきたろう・♂・25歳・用心棒)
根津みよし(ねづみよし・♀・27歳・用心棒)
浜野茂吉 (はまのもきち・♂・50歳・川越藩家老)
浜野朱音 (はまのあかね・♀・18歳・茂吉の次女)
浜野兵輔 (はまのひょうすけ・♂・23歳・朱音の夫)
真壁利一 (まかべりいち・♂・22歳・川越藩旗本)
金子むつ (かねこむつ・♀・45歳・真壁の世話役)

水木和埜 (みずきかずの・♀・16歳・水木の姉)
水木和朗 (みずきかずあきら・♂・35歳・太朗と和埜の父)
水木太朗 (みずきたろう・♂・10歳・幼いときの水木)【水木と兼役】

油田澄  (ゆだすみ・♀・28歳・某藩の澄君)【和埜と兼役】
代田法一 (だいだほういち・♂・35歳・澄の家臣)【和朗と兼役】
雉井むね (きじいむね・♀・20歳・澄の侍女)【むつと兼役】



     プロローグ

     元禄7年(1691年)川越近くの旅籠。手負いの和朗がやってくる。
     和朗、その場にへたり込むと和埜が慌ててやってくる。

和埜  父上!!

和朗  (肩口を押さえながら)和埜……よかった、無事であったか。太朗は?大丈夫か?

和埜  はい、今は二人して納屋に隠れておりました。太朗はまだそこに隠れさせており
    ます。それより父上……そのお怪我は……。

和朗  気にするでない。しかしまさかこのような旅籠に夜襲をかけてくるとは……。

和埜  あの賊は………まさか若年寄様?

和朗  かもしれん。しかし証拠はない。無闇に疑ってはならぬ。

和埜  それ以外考えられません。若年寄様は何かと父上を目の敵にして……。

和朗  憎まれるのも家老の務めというものだ。なに、こうして家族の者の命が助かった
    のであればそれで充分だ。幸い盗られたのも上申書だけだ。

和埜  上申書?まさか武蔵野開墾に関する上申書ですか?

和朗  あぁ、折角苦労して領民の声を集めたというのに……惜しいことをした。

和埜  まさか若年寄様はそれをご自分のご意見として殿に?そんなのおかしいです!
    元々は父上が民のために……。

和朗  良いではないか、私がやろうが若年寄殿が行おうが民の為に変わりはないのだ。

和埜  父上……なりませぬ。私は絶対に納得いきませぬ。追います!追って上申書を取
    り返して参ります!!

     和埜、和朗の刀を抜いて走り去る。

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