生きてますかぁ!?
      生きてますかぁ!?


               
作 石岡 克
登場人物
ヨウイチ(男)
マサト(男)
ナツミ(女)
ヒサオミ(男)


舞台は洋館のリビング。下手側に大き目のテーブルが一つ置いてあり、上手側にソファー
が一つ置かれている。
テーブルの上には写真立てが一つ伏せて置いてある。
舞台には最初からヨウイチがおり、リビングのいろいろなところを探っている。
ヨウイチ、その内にふと上手側を振り返り、人がやってくるのを発見、慌ててテーブルの
影に隠れる。
マサト登場。少し遅れてナツミが。

ナツミ :ちょっと、待ってよ。

マサト、面倒くさそうに振り返る。

ナツミ :もっとゆっくり行こうよ。
マサト :どうして。
ナツミ :歩きにくくない?
マサト :別に。
ナツミ :信じらんない。さっきだってあんなに穴だらけだったのに。
マサト :中はかなり散らかってる上に穴ぼこだらけですって、書いてあったんでしょ?
ナツミ :詳しく載ってるサイトにはね。人がいなくなって十年はたってるんだって。
マサト :だったら、心の準備ぐらいしとこうよ。そうすれば足取られたりしなかったの
     に。そういえば、怪我ない?
ナツミ :なによ、そういえばって? ホントに心配してんの?
マサト :(ぼそりと)頑丈だからね。
ナツミ :なに?
マサト :何でもないよ……っつーかさぁ、もう帰んない?
ナツミ :何でよ!?
マサト :どうせまた単なる空き家だって。探したって出るのは埃だけだよ。
ナツミ :そんなことないよ。どこのサイト見ても、ここは絶対出るって。
マサト :全部嘘っぱちでしょ。人を集めるためのでたらめ。
ナツミ :あー、なに!? 人の趣味にケチつけようっての!?
マサト :んなこと言ってないって。でもさぁ、他の話だって全部嘘だったじゃない。
ナツミ :そんなことないでしょ!? ほら、惨殺の舞台になったホテルの血の跡とか…
     …
マサト :どこの世界に喧嘩上等なんて形の血の跡があるんだよ。単なる落書きだって。
ナツミ :人を引きずりこむ恐怖の湖とか!
マサト :水草が足にからまっただけ。そのせいで溺れそうになったの忘れた?
ナツミ :夜な夜な廃病院に出没する老婆の霊とか!
マサト :ボケた婆さんが迷いこんでただけ。そういや元気かなぁ、あの婆さん。
ナツミ :それに……ええと……
マサト :……ほらね? その手の話なんて全部嘘だよ。つくり話。
ナツミ :何その言い方!? ムカツク。
マサト :(ため息を吐いて)あのさぁ、そろそろ止めにしない? 八月の頭にこんなこ
     と始めて、これで十回目だよ。
ナツミ :今までのが外れだっただけ! 今回こそ当たりなの!
マサト :その台詞も毎回聞いてるよ。そろそろ諦めてくれないかなぁ。今ごろからレポ
     ート書き始めいと、本気で単位が危ないんだけど。
ナツミ :何よそれ! あたしより単位をとろうっての!?
マサト :滅茶苦茶なこと言うなよ……?
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