世界のしくみ
【登場人物】
永井良和〈NGOスタッフ(チーフ)〉
北本綾子〈NGOスタッフ(現場監督)〉
安藤 梢〈NGOスタッフ(通訳)〉
松田典男〈NGOボランティア志願者〉
エリバ・ヤシワカ〈現地人(部族代表)〉

  雑然としているようでそれなりに片付いている一室。
  パソコンや無線機のようなものが置かれている、某発展途上国で活動を展開するNGO組織のオフィス。
  無線機がランプを点灯させ着信を告げるが、人の気配が無く、やがて止まる着信音。
  北本がヘッドフォンで音楽を聴きながら部屋に現れる。
  作業服のような、動きやすく、ラフでワイルドな感じの服装。
  彼女の聴覚を支配するけたたましいハードロック。かなりの音量で音漏れが激しい。
  その手には掃除用具がだらしなく携えられている。かったるそうに部屋の掃除を始める北本。
  時折ロックの音楽に踊るような軽快な動きも見せる。
  しばらくすると、再び無線機に着信を告げるランプが灯り、掃除をしながら、それに気が付く北本。
  慌てるそぶりもなく、むしろ面倒臭そうに掃除用具を置いて、音楽を止め、無線に応答する。

北 本 (不機嫌)はい「ブリッツ・ブリッジ」……なんだ、チーフ?……で、何?……そう……ふぅん……はいよ、わかったよ。え?……ああ、わかってるって。…あ?まだ何か……もう切るよ!(無線切る)

  フォーマルな服装の安藤が北本の無線会話中に入室している。
  安藤の脇には何冊かのファイルなどが抱えられている。

北 本 (安藤に気付き)な、なんだよ?
安 藤 (目を逸らして)相変わらずひどい言葉使いね。
北 本 余計なお世話だ。
安 藤 誰からだったの?
北 本 (ソファに腰掛けて)……永井のおっさんから。
安 藤 チーフから?(メモなどを用意して)で、何ですって?
北 本 慌てるなよ。この前言ってたラジオのボランティア希望者をここに連 れてくるだとさ。
安 藤 こっちに着いたのね?定期便がしばらく運休していたみたいだから心配だったけれど…。
北 本 へっ!物好きな奴もいるもんだ。何だって、こんな辺境の地なんかに好き好んでボランティアしに…。
安 藤 私たちと一緒に活動してくれるかもしれない貴重な人材でしょ?歓迎しなくちゃダメよ。
北 本 (うんざり)永井のおっさんにも同じこと言われたよ…。

  お互いにやれやれ…といった間。
  やがて安藤は席に着き、資料を広げて仕事を始める。
  つまらなそうにその様子を眺めている北本。

北 本 …仕事か?
安 藤 遊んでいるように見えますか?
北 本 (鼻で笑い)見えなくもないな。
安 藤 …今日は部族代表のエリバさんとの定例会談があるのよ。
北 本 ああ。週に一度のアレか。そりゃ大変だ。
安 藤 (時計を見て)ボランティアの人との顔合わせが済んだら、迎えに行くようね…。

  再び静かな間。

北 本 …男かな?
安 藤 え?
北 本 これから来るボランティアだよ。どっちだと思う?
安 藤 さあ…?
北 本 あたしは…(紙幣を取り出し机に叩きつけ)女に賭ける。あんたは?
安 藤 そんな賭けなんかしません。
北 本 硬いこと言うなよ。(紙幣をひらひらさせ)ちゃんと後でおごってやるから。
安 藤 あなた…自分が勝つ気でいるみたいだけれど……それ以前に、あなたが女に賭けたら、私は男に賭けるしかないじゃないの。
北 本 よぉし、決まり!あたしは女、あんたは男だね!(うきうきしながら)ほら、早く出しな!
安 藤 (半ば呆れて)……はいはい。

  観念して財布を探す安藤だが、身に着けていなかった様子。
1/14

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム