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喫煙スペース

　　　　喫煙スペース
　
　男Ⅰ
　男Ⅱ
　男Ⅲ　竹田
　女
　
　
　　男Ⅰ、Ⅱ、煙草をふかしている。
　　女、少し離れた場所で、煙たそうにしている。
　
　Ⅰ　「……お前さ」
　Ⅱ　「何？」
　Ⅰ　「渡辺の事、どう思う？」
　Ⅱ　「渡辺って……渡辺部長？」
　Ⅰ　「そうだよ。どう思う？」
　Ⅱ　「どう思うって……」
　Ⅰ　「やな奴だよな」
　Ⅱ　「うん、まあな」
　Ⅰ　「だろ？　あいつの言葉、全部癇に障るしさ、女性社員を欲望丸出しの眼で見てるしさ」
　Ⅱ　「うん、まあ、そんな事よりもさ」
　Ⅰ　「ん？」
　Ⅱ　「ちゃんと歯は磨いて欲しいよな」
　Ⅰ　「そうそう。絶対磨いてない臭いだよな、あれは」
　Ⅱ　「奥さんは何にも言わないのかな」
　Ⅰ　「何でも別居中らしいぜ」
　Ⅱ　「なるほどね」
　Ⅰ　「風呂も入ってるのか怪しいぜ、あれだと」
　Ⅱ　「そうだな……ところでさ」
　Ⅰ　「何？」
　Ⅱ　「何だよこの会話」
　Ⅰ　「え？」
　Ⅱ　「何で貴重な休み時間に、臭い部長の話しなきゃいけないんだよ」
　Ⅰ　「だって何か暇だったんだもん……」
　
　　女、男たちに聞こえるように咳をする。
　　男二人、構わず煙草を吸い続ける。
　
　Ⅰ　「でさ、あいつの机の中の噂、知ってる？」
　Ⅱ　「あいつって？」
　Ⅰ　「だから、渡辺だよ」
　Ⅱ　「もういいって、それ関係は」
　Ⅰ　「あいつの机の中にはさ、消費期限が二千三年の牛乳が入っているらしい」
　Ⅱ　「どうでもいいよそんなの」
　Ⅰ　「まだ終わりじゃないぜ」
　
　　女、二人に近付く。
　
　Ⅰ　「表面が真っ黒になったもみじ饅頭があるらしくてさ、」
　Ⅱ　「もういいよ」
　Ⅰ　「何で黒いかって言うと、黒アリが」
　女　「いい加減にしてください」
　
　　二人、止まる。
　
　Ⅰ　「……え？　僕ですか？」
　女　「あなた方以外にいないでしょう？」
　Ⅱ　「あなた『方』って……気持ち悪い話してたのはこいつだけですよ」
　女　「（Ⅱに）そんな渡辺部長とかがどうしたとか言う話はどうでもいいんです」
　男　「え？」

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