モスクワ一万尺
   モスクワ一万尺
 
 
 キャスト
 
 高田タカ 男
 記者 不問
 父
 母
 
 
 
  タカ、記者、向かい合って座っている。
 
 記者 「それじゃ、インタビューを始めます」
 タカ 「よろしくお願いします(礼)」
 記者 「高田タカさんは、今回ロッキードレコードからマキシシングル『あなたにアディダス』でデビューされるわけですが、この曲の聞きどころなどを教えてください」
 タカ 「そうですね……レコーディングの段階から、すごいいい曲だと思っていたんで、とにかく曲をじっくり聴いて欲しいですね」
 記者 「(頷く)……作詞は高田さんが担当されていると聞きましたが」
 タカ 「はい。まず曲を聞かせてもらったときに、サビの部分の歌詞がピーンと頭に浮かんできまして。ぜひ書かせてくれとお願いしたんです」
 記者 「なるほど……まず出だしの、『中途半端な夢のひとかけらが 臆病な僕を悩ませている』……いい歌詞ですね」
 タカ 「やっぱり歌詞っていうのは、何だかんだ言って出だしとサビが全てだと思うんですよ。出だしとサビの歌詞がいいものじゃなかったら、やっぱりそれはいい歌とは言えないんじゃないですかね」
 記者 「はい、そうですね。で、サビの歌詞が、『僕達はいつだって 二人で一つだった 粉雪が舞う季節に ララライ ララライ ララライ』……この歌詞は、一体どういう感じで出てきたんですか?」
 タカ 「いや、直感ですね。さっきも言いましたけど、ピーンと頭に浮かんできたんです」
 記者 「すごいなぁ。将来が楽しみな新人歌手ですね」
 タカ 「いえいえ、そんなそんな」
 記者 「……で、この曲『あなたにアディダス』なんですが、もうCMソングとしても有名になっているんですよね」
 タカ 「そうらしいですね。嬉しいです」
 記者 「えー、スポーツ用品のナイキのCMに使われているという事ですが、どう思われますか?」
 タカ 「見ましたけど、本当にこの曲のイメージ通りなんで、本当に嬉しいです」
 記者 「そして、来週から始まる連続ドラマ『一リットルをプロデュース』の挿入歌としても話題を集めています」
 タカ 「やっぱり大勢の人に聞いて貰えるっていうのが嬉しいですね」
 記者 「んでまあ、話はがらりと変わりますが……ここからはズバリ、プライベートに関してお聞きして行きたいと思います」
 タカ 「お答えできる範囲であれば(笑む)」
 記者 「えー、まずですね。タカさんの家族や家庭のお話なんかを聞かせていただきたいのですが」
 タカ 「何から話せばいいのかなあ」
 記者 「例えば、ご両親のこととか」
 
  タカ、顔色を変える。
 
 タカ 「親……ですか」
 記者 「えー、何でも、ご両親も芸能人でいらっしゃるとか聞いてますけど」
 タカ 「……はい」
 記者 「有名な方なんですか?」
 タカ 「……やっぱりそうか」
 記者 「え?」
 タカ 「やっぱり僕は、二世タレントとしてしか見られていないんだっ!」
 
  タカ、顔を両手で覆う。
 
 記者 「ど、ど、どうしました?」
 タカ 「結局、所詮、とどのつまり、僕は二世タレントなんだ。ううう(涙)」
 記者 「あ、あの、そういう意味で言ったつもりは……」
 タカ 「じゃあ何で親の事を聞くんですか!」
 記者 「いや、あの……深い理由はなかったんですけど」
 タカ 「嘘だ嘘だ! そうやってさりげなく親父の近況とかを知ろうっていう魂胆なんだ!」
 記者 「いえ、違います。第一、その……ご両親がどういう方なのかも知りませんし」
 タカ 「(荒い息)本当ですか?」
 記者 「本当です」
 タカ 「本当に、モスクワ一万尺の事を知らないんですか?」
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