黒いドレスの女
まるで映画のように

「黒いドレスの女」

作 森島永年

登場人物
・浩子
・裕一

「一晩中踊れたら」の音楽にのって、浩子と裕一が踊りながら登場。
天楽座の新作『映画に出られたら!』のワンシーンだ。

浩子 「こんな、きらびやかなドレスを着て舞踏会へ出るのが夢だったの。でも、そんなパーティ、わたしの生活には縁がないと思っていたの」(黒い服は着ているが別にドレスではない)

裕一 「普通のパーティへタキシードを着ていったんじゃピエロだ。結婚式の司会者に
間違われるのが落ちだからね」(別にタキシードは着ていない)

浩子 「そしてあなたと出会ってわたしの生活のすべてが変わった」

裕一 「きみは変わっていないよ。変わってしまったら困るよ」

浩子 「だって、今までわたしが出会えなかったひとつひとつの新しい出来事に、わたし、変わって行かざるをないわ」

裕一 「そんな堅苦しい言い方をしないで、もっと肩の力を抜いて。リードはぼくに任せて、今夜の主役は君なんだ。……ほらみんながきみを見ている。」

浩子 「本当かしら」

裕一 「本当さ。そして、これからは、ぼくたちは毎日手を携えて踊り続けるんだ。新しい人生のステップを一歩一歩踏みながら」

浩子 「朝起きると、ベッドの中でクロワッサンをかじる」

裕一 「もしもきみが望むなら」

浩子 「世界中のあらゆる国を回ってみたいわ、あなたと二人で。」

裕一 「もしもきみが望むなら」

浩子 「どうしてそんなに優しくなれるの?」

裕一 「どうして?……こんな夜にそんなセリフはやめよう。きみのドレスはこんなにもきらびやかで、楽団の音楽はあんなにも楽しそうに響いているじゃないか。もう昨日までのことは忘れてしまおう。そして、これからは今と明日のことだけを考えよう」

浩子 「昨日までは、わたしは惨めなOL暮らしだった、それが今は……」

裕一 「きっと、きみはぼくとめぐり合えるのをまっていたんだ。そして、それは、ぼくも同じこと」

そのまま、回想シーンへ。道で二人がぶつかる。

浩子 「ごめんなさい」

ぶつかった拍子に浩子はバッグを落としてしまう。それを探しながら。

浩子 「目が悪いもんですから。いえ、いつもは眼鏡をかけているから、そんなことはないんですけど、今日ちょうど修理に出していて」


裕一 「いや、ぼんやりしていたこっちも悪いんですよ」

浩子 「(バッグの中身を拾い)本当にわたしがわるいんです。眼鏡がないと、本当にぼんやりとしか見えなくて。よりによって、昨日つまずいて、割っちゃったものですから」

裕一 「お手伝いいたしましょうか」

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