ある無機質な物語
題名:ある無機質な物語
作者:にゃがえ

登場人物
 ケイスケ
 ジュウイチ
 サクラ
 ヨシダ警部
 警察官数名

   1

   何の変哲もない昼下がり。
   部屋の中には穏やかな日の光が差し込んでいる。
   部屋の中のソファも、テーブルも、観葉植物も、いつもと同じようにそこにある。
   部屋の中に、ジュウイチが小型の掃除機を持って入ってくる。
   部屋の中を、掃除し始める。


ジュウイチ この部屋で最後、ですね。…いえ、台所は後回しにしたのでした。なので、この部屋は最後から二番目になるわけですね。現在午後二時。ケイスケ様の帰宅時間は、いつもなら四時ですが、本日は早く帰られるとのことだったので、そろそろかもしれません。早く終わらせなければ…。


   ソファなどを動かしながら、てきぱきと掃除を進めていく。
   玄関のチャイムが鳴る。


ジュウイチ おや、どうやらご帰宅のようですね。はい、ただいま参ります。


   ジュウイチ、玄関に出る。
   ケイスケが入ってくる。その後ろにはジュウイチ。


ケイスケ いや〜、疲れた。

ジュウイチ お疲れ様です、ケイスケ様。本日はどのような業務だったのですか?

ケイスケ 今日は新製品のお披露目だったんだ。年寄りはうちの製品には少し抵抗があるんだよな〜。まあ、何人か食いついてきた人もいたぞ。

ジュウイチ そうですか。それは良かったですね。

ケイスケ …やっぱり、なんかお前の喋り方は冷たい感じがするな。

ジュウイチ スミマセン。

ケイスケ いやいや、いいんだ。別にお前は何も悪くはない。

ジュウイチ ありがとうございます。

ケイスケ そう言えば、あいつはどうした?

ジュウイチ …あいつ…あいつ、とは?

ケイスケ ああ、悪い。サクラのことだ。

ジュウイチ サクラ様ですか。…サクラ様が何か?

ケイスケ サクラは今いないのか?

ジュウイチ はい、現在サクラ様はいらっしゃいません。
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