演劇娘、走りさる。
演劇娘、走りさる。



☆登場人物 女子ばかり9人。全員、とあるエスカレータ式の私立女子高校の演劇部部員。

  後藤あゆみ 二年生。脚本兼演出。
  井上真里  二年生。助演。
  松下環   一年生。
  上森チカ  二年生。主役。
  小林陽子  二年生。照明。
  森原瑛子  二年生。音響。
  川村沙里  二年生。衣装。
  安西小夏  二年生。準主役。
  泉 昌子  二年生。舞台監督。

 とある女子高校。
  文化祭前日のある秋の朝。
  1年B組の教室。

  演劇部がここで公演を行うため、壁に暗幕が張り巡らされるなど仕込みが入っている。
  朝、まだ誰もいない教室に松下環がおそるおそる入ってくる。

松下 ……おはようございます。昨日はすみませんでした。……あれ、誰もいない。

  ホッとして仕込みができた教室の中を見て回る。

松下 すごい。

松下 (独り言)教室を舞台にするってこういうふうに作るんだ。
   こっちが舞台で向こうが客席かあ。


  興味津々で教室を見て回る松下。いつのまにか側に後藤あゆみ(=演出)がいる。


後藤 松下。

松下 ぎゃあああ。びっくりした。やだ、後藤先輩じゃないですか。おどかさないでくださいよ。

  後藤、黙っている。

松下 お、おはようございます。

  後藤、黙っている。

松下 あの、部長……じゃなくて演出。昨日はお休みしてすみませんでした。

後藤 理由は?

松下 は?

後藤 だから。昨日休んだ理由。

松下 あ、はい。理由ですね。ちょっと待ってください。

後藤 今、考えてるの?

松下 いやいや、ちょっと思い出してるところで。

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