七夕伝説
七夕伝説


<登場人物>

川原香織=織り姫(ベーガ)
今野和彦=牽牛(アルタイル)
白鳥綾音=デネブ
吉岡剛=ペルセウス
てんびん
スピカ
ガリレオ博士
 キューピット
 アフロディーテ
 天帝ゼウス
 その他






*プロローグ
舞台には人の背丈よりも高い笹の薮。
よく見れば、その一本一本に、色とりどりの短冊がたくさん下がっている。
七夕飾りの林の後方から光が射し始めると、笹達がゆっくりと、脈打つように動き始める。
その間から現れる見目麗しき、一人の女。
きらびやかな衣装に身を包んだその女こそ、愛と美の女神・アフロディーテ。

アフ 夜空を貫く天の川の絶えざる流れ。その流れゆく星々が奏でる妙なる調べ。耳を澄ませば、それは、時代に引き裂かれ、運命に翻弄された恋人達の祈りの声。この思い、宇宙に届けとばかりに投げ上げられ、そのまま彗星の如く宇宙を巡り続ける思いのつぶて。はたまた、超新星爆発のように儚く消えた、寄る辺なき恋の残り火。こうした祈りや願いの力で、今日もこの宇宙は膨張を続ける。

アフロディーテ、短冊に書いてある願い事を読む。

アフ 「やれますように」。何をや!

さらに何枚かを読む。

アフ  「ローンの返済が終わりますように」「エアジョーダンが欲しい」「援助交際ができますように」「SMAPの木村君に会えますように」「四谷大塚に入れますように」「どこでもいいから就職できますように」「ピルが解禁になりますように」「宝くじで一億円当たりますように」 何なのこれは?この愛と美の女神・アフロディーテの管轄外の願い事ばかりじゃないの。いつからこの宇宙は現世利益のゴミ捨て場になっちゃったのかしら。

そこへ、アフロディーテの息子、キューピットが来る。

キュ 母ちゃん、こんな所にいたのか。
アフ おや、エロース。
キュ キューピットって呼んでくれよ。もう、探したんだからね。駅にポスターでも張り出そうかと思ったよ。
アフ 人を逃走中のオウム手配犯みたいに言うんじゃないよ。お前こそ、どこほっつき歩いてたんだい。
キュ おいらは勿論、お仕事お仕事。
アフ 恋人達の願いを聞いて、思いを伝えたいその相手のハートめがけて、恋の矢を放つってか?
キュ そうさ。心淋しき男と女を一つに結ぶ幸福の橋渡し役、おいらが噂のキューピットでーす。
アフ それにしちゃお前の矢はよく狙いが外れるね。
キュ いやあ、弓の腕前はまだ修行中ってとこで…
アフ 放った矢がとんでもないところに当たっちゃって、お陰で人間関係が拗れて大騒ぎってことも日常茶飯事だってね。あるでしょ、おたくの職場でも。
キュ あれは、依頼する人間の方にも、大いに問題があるんだぞ。
アフ あら、そう。
キュ 「あの人だけが好き。あの人なしでは一日だって生きてはいけない。あの人に、この燃えるような思いを伝えたい。」そう思っている心の奥底で、「でも、こいつもちょっといいな。こいつは金もってそうだしな。こいつはマッチョで結構テクが凄いって噂だしな」なんてことを平気で考えられちゃ、さすがの俺様の矢も何処をめがけて飛んでいいものやら…。
アフ 人間てのはそんなに移り気なのかい。
キュ それはもう。恋人の心と秋の空、そして公明党は猫の目のように変わるんだ。
アフ 困ったもんだねえ。たった一人の相手への愛さえ貫けないなんて、人間てのは何て意志の弱い存在なんだ。
キュ そういう母ちゃんこそ、随分いろんな男と関係があったっていうじゃないか。
アフ えっ?そ、そんなことは…
キュ おいらには腹違いの兄弟が何人もいるみたいだし、母ちゃんの恋愛が戦争の原因になったこともあったって聞いたよ。
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