トカゲとカメレオン
「トカゲとカメレオン」

舞台上には三つのテーブル。
前列左右と後ろに一つ。
後方のテーブルに死神(黒い服)が座っている。
コーヒーを飲んだり、新聞を読んだりメールしていたり、自然にそこにいる。
前列上手のテーブルに二人。
他愛もないことを話している中、照明フェードイン。

宮沢「ねえねえ、昨日の見た?」
高木「昨日? ああ、連ドラ?」
宮沢「そうそう!! もードロドロでさあ。すっごいことになってるんだってば」
高木「ドロドロ? あれってコメディーじゃないの?」
宮沢「は? 恋愛モノでしょ?」
高木「待てよ。連ドラってあれだろ? 夜の九時からやってる……」
宮沢「何言ってんの? 昼の一時半からにきまってるじゃん」
高木「何でそんな真昼間に学生がテレビ見てんだよ!!」
宮沢「決まってるじゃん。学校の下の定食屋のテレビよ」
高木「そこまでして昼ドラ見るなよ。いい若いもんが」
宮沢「そうよねー。やっぱり最高傑作は愛の嵐だったわ。なんかいまいちそこまでして見る価値があるかって聞かれると……」
高木「俺が言いたいのはそうじゃなくって」
宮沢「へ?」
高木「いい若いもんが昼ドラ見てることに何か間違いがある気がするんだけども」
宮沢「けっこう面白いよ」
高木「そっか」

二人、コーヒーをすする。

高木「そういえばさ、宗教学のレポート書いた?」
宮沢「あーまだテーマも決めてないよ。決めた?」
高木「決めた」
宮沢「何にしたの?」
高木「ずばり終末予言!」
宮沢「暗っ」
高木「けっこう面白いぜ?」
宮沢「ほー。それって宗教なの?」
高木「どんな宗教にも大抵はあるんだよ。終末予言って」
宮沢「そーなんだ」

宮沢、急に目を押さえる。

宮沢「いたたたたた」
高木「どうした?」
宮沢「なんかコンタクトの調子がおかしくって」
高木「乾いたんじゃねーの? さっきから瞬きずっとしてただろ」
宮沢「あれはなんか目がチカチカしててさ」
高木「ソフトに変えたら?」
宮沢「あの激痛の一ヶ月を捨てソフトに走るのは……」
高木「はいはい」
宮沢「もーはずしちゃお」
高木「はずして見えるのか?」
宮沢「片目のみ1.2」
高木「世界がゆがむぞ」
宮沢「あー瞬きしてたらけっこう直るんだけどなー」
高木「あ。そういえば知ってるか?」
宮沢「何よ。シニカルな笑みして」
高木「レポートで神話の本も読んだんだよ。その時見つけた話があって」
宮沢「何?」
高木「一生のうちに瞬きの数は限られてるって」
宮沢「何それ」
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