あらすじ
実はかなり前からこの作品をやりたいと思っていました。
というのは、この作品は新作ではありません。でも、再演でもありません。
ややこしいですね。
昔々、2009年にアトリエ劇研で、第22回公演として「命短し、恋せよ乙女」という作品を上演しました。作者としては、かなり気に入った作品でして、芝居の出来も満足の行くものでした。ところが、諸事情により、この作品については映像記録が残っていません。写真が数枚と、台本があるだけです。そのこともあって、かねてからもう一度やりたいと思っていました。
それで、再演を念頭に置いて脚本を読み直してみると、自分で言うのも何ですが、思っていた以上におもしろい。ただ、時代背景の変化もあるし、内容に関しても、手を入れたら、もっとおもしろくなるなとも思いました。
それで、改作=リメイクしてやろうと考えた次第なのでした。
内容は、ざっくり言うと近未来の話です。いわゆるバーチャル・リアリティに関連した設定になっています。当時、2007年頃からメタバースの前身であった「セカンドライフ」というのが世界的に話題になってまして、それに触発されて書いたような気がします。(曖昧な記憶ですが)その近未来の世界を、全然SFっぽくないリアルなタッチの話として作ってみよう、というのがコンセプトでした。
だから、ごく普通の空間に、ごく普通の人々が登場して、ごく普通の会話をします。でも、見ているうちに「あれ? 何か変だな?」と思っていただく、という、そういう仕掛けです。
最近のかんから館の芝居は、作者の年齢が影響してか、「死」を扱った作品が多いのですが、当時はまだそんなにリアルに考えるような年齢にではなかったはずなのですが、ここでもやっぱり「死」が扱われています。そして、それは同時にその裏返しとして「生きる」ことについて考える作品にもなっています。
あと、もう1つ、特徴としては、かんから館の作品としては珍しく、ギャグ、笑いの要素がほとんどありません。そういう意味ではすこぶる地味な作品でありまして、「お客さん呼びにくいなあ」とは思っているのですが、芝居が好きな方には十分楽しんでいただけるとは自負しています。いや、芝居に慣れていない人でも結構おもしろいんじゃないかな?
ということで、請うご期待。