海底探検
海底探検
作・なかまくら
20240324

海 ・・・ 科学者の卵。
湊 ・・・ 海の幼少期の育成プログラム。本物の湊も存在する。
深水・・・ 科学者。 A
雲珠・・・ 湊の先輩。海底登山家。 B



雲珠   いいか? 二人とも。海底登山の基本は、コンパスで方角をよく確認することだ。それから、残り時間にくれぐれも気を付けることだ。酸素ボンベには、決まった量の酸素しか入っていないからな。海の中の山はな、ジュール・ヴェルヌの発表した「海底二万マイル」っていう小説の中で出てくるんだ。ノーチラス号に乗っていたピエール博士、召使のコンセイユ、銛の名人ネッド・ランドは、ネモ船長に連れられて、海底を散歩する。その様子が鮮やかに脳内に浮かび上がってきて、これは、もう、・・・登るしかないなって!
海    博識なんですね。
雲珠   父は、科学者だったんだ、海くん、君と同じでね。だが、おれは出来が悪い息子でね。こんな風に自由に生きるしかなかった。・・・ほら、ここからの景色は最高だろう!? こんな場所に来られたら、何もかもが、小さなことに思えてくるんだ!



中央で、うずくまって座っている海。
唐突に目を覚まして、叫ぶ。

海    待ってくれ!
湊    ・・・と、ぼくは言った。
海    ・・・それはぼくじゃない。
湊    ・・・と、ぼくに言った。
海    ぼくはそんな非道いやつじゃない。
湊    非道いことをした。
海    だけど、それはぼくの・・・
湊    探検の結果だ。
海    探検をしなかった場合の結果だ。ぼくは決めたんだ。
湊    これは現実か?
海    未成年が受ける学習プログラムだと・・・思う。
湊    そこには心があるのか?
海    分からない。シミュレーションされたものに、魂は宿るのか・・・。
湊    どこまでがプログラムによるシミュレーションなんだ。
海    何度も練習したんだ。よりよく生きていくために必要なんだ。
湊    さっきも必死に言っていたじゃないか。「待ってくれ」って。
海    練習だから、「待った」ができるんだ。
湊    いつから本番が始まるんだ?
海    大人になったらかな。
湊    練習は本番のように、っていうじゃないか。
海    本番は練習のように。
湊    でも、きっとぼくらの人生は、どれが練習かなんて分からない。
海    そうなんだろうな。
湊    探険するのか。
海    険しい場所を探してこその探険ですから。
湊    どうせ、これも練習じゃないのか?
海    分からない。ただ、・・・ぼくを・・・ぼくたちを見守っていてほしい。そう思う。



病院の廊下かもしれないところ。点滴の支柱を持ったまま、2人。

A    ちょっとお待ちになってください。
B    あら、深水さんじゃありませんか。
A    そちらこそ、雲珠さん。
B    こちらこそ、雲珠です。今日はずいぶんとお顔色もよろしいようで。
A    それはお互い様ですわ。
B    では・・・退院
A    そろそろ・・・退院・・・
B    この病院ともおさらばで退院・・・なんてことはありませーーん!
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