夏休み(短縮バージョン)
短縮(40~45分)バージョン
夏休み

現代の夏休みのある日  七つ森の入り口

蝉時雨が聞こえてくる。
幕が上がると、そこは七つ森の入り口。
夏の日差しを浴びて、一人の老人が舞台中央で客席に背を向けて立っている。
老人の名前は大場憲一。

大場[現代] (後ろ向きで)もういいかい。
少女の声  まあだだよ。
大場[現代] もういいかい。
少女の声  まあだだよ。
大場[現代] もういいかい。
少女の声  もういいよ。

その声に大場[現代]が振り返る。
彼は手に真っ赤なかざぐるまを持っている。

大場[現代] そうだ、ここだ、ここだった。思い出したぞ。そう、あれは昭和十一年。私達は七つ森小学校の六年生だった。あの日私達はみんなでかくれんぼをしていたんだ。あの時一緒だったのは…
              
一人の少年が現れる。
その少年はかくれんぼの鬼になって、数を数える。

少年 七・八・九・十。よーし、見つけにいくぞ。

少年が走り出そうとする。
その走り出そうとする姿勢で少年は静止する。

大場[現代] 高田勇輝。みんなから、ターちゃんって呼ばれていた。運動が得意で、いつも私達のまとめ役だった。

高田が隠れている仲間を捜しにいく。

高田 みーつけた。

一人の少女が、可愛らしく出てきて静止する。 

大場[現代] 遠野みどり。みんなから、ミーちゃんって呼ばれていた。とっても歌が上手で、ミーちゃんが歌を歌うと、みんな笑顔になった。

   かくれんぼが続く。

高田 みっけ。
少女 くそっ、みっかったか。

一人の少女が、のっしのっしと出てきて静止する。

大場[現代] 大岩洋子。大岩って名前からオイワって呼ばれていた。男らしいなんて言葉は今ではあまり使われなくなったけど、あの当時の私にとって私よりずっと男らしい女の子だった。

かくれんぼが続く。
一人の少年が、今見つかった子ども達の中に入って知らん顔をしている。
しばらくして高田がその少年に気づく。

高田 みっけ。

   その少年が「見つかったか」というポーズをして静止する。

大場[現代] 天野満夫。いつも人のやることと反対の事ばかりやるんで、みんなから天邪鬼って呼ばれていた。天邪鬼と私は喧嘩ばかりしていた。

高田 みんな見つかったぞ。

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