カラスの白昼夢
「 カラスの白昼夢 」 Ver 1.2/2022.9.9 

トビ(東海 とうみ) / 指定なし
ダチョウ(八千代 やちよ) / 指定なし
カラス(山田 やまだ) / 男
ミミズク/ 指定なし
ツバメ/ 女



研究所のような場所。中央には椅子に縛り付けられた男が一人。
二人の研究員が忙しなく動き回っている。

トビ   電撃装置の用意はいいか?
ダチョウ  はい。
トビ   調合薬の用意は?
ダチョウ  準備完了です。配合も済んでいます。
トビ   よし。では、計画まで暫し休憩だ。
ダチョウ  昨日から一睡も休息をとっていません。
トビ   不満か?
ダチョウ  いいえ。

ダチョウは机の上のスナック菓子へ手を伸ばす。

ダチョウ  今回こそ成功するといいですね。またミミズクのようになってしまってはいくら鎮静剤があっても足りません。それに素体だって、昨今そう簡単には手に入りませんから。
トビ   それはそうだが君、その手にしているのは私のチョコスナックだな。一体どうやって発見したんだ。
ダチョウ  あのねえ、いくらあなたの理想が崇高でも、こんな労働環境じゃ誰もついてきませんよ。お菓子くらい黙って提供したらどうです?
トビ   だからそれをどうやって発見したんだと聞いている。
ダチョウ  ミミズクが戸棚に隠しているのを見つけたんですよ。
トビ   なんだと
ダチョウ  やつの鳥目もたまには役に立つものですね。いや、嗅覚か?
トビ   やはり奴は失敗作だ。
ダチョウ  これ期間限定ですか。
トビ   ああ。それに加えて店舗限定だ。
ダチョウ  次回からは恥ずかしがらずに名前を書いておくことですね。トビさん。
トビ   言っておくが、私はまだこの名前に納得したわけじゃないぞ。君のネーミングセンスは一体どうなっているんだ。トビにダチョウ、ミミズク?
ダチョウ  いいじゃないですか、鳥類は人よりよっぽど立派です。それに美しい。あなたの思想と一致しているのでは?
トビ   その鳥類の識別名は人が名付けたに過ぎないぞ。
ダチョウ  ……トビさんのそういう揚げ足を取るところ、嫌いです。

そこへお茶を持ったツバメが入ってくる。

ツバメ   あの、お茶を入れました。
トビ   やっと何も言わずとも事務作業ができるようになったのか。
ダチョウ  いえ、それはどうでしょうね。ツバメ、そのお茶はどの茶葉を使ったんですか?
ツバメ   茶葉
ダチョウ  そう、茶葉。それとも戸棚のティーバッグ?
ツバメ   あの、ペットボトルを
ダチョウ  沸かしたんですか?
ツバメ   いえ……
ダチョウ  ペットボトルのお茶をお椀に入れ替えて持ってきた?
ツバメ   いえ、ペットボトルの水を。
ダチョウ  お茶の要素はどこにいったんだ。
トビ   わかった、もういい。下がれ。
ツバメ   すみません。
トビ   使えないっていうのは本当だな。起動する時にどこか頭でも打ったのか?
ダチョウ  さあ。元からガラクタをかき集めたに過ぎませんから、動いているだけ上等です。
トビ   それにしたってあれはないだろう。ただのお茶汲み要員かと思ったら、それすら満足に出来ないのか。
ツバメ   すみません。
ダチョウ  まあまあ、そう過度に期待せず。
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