ライへに縋って
葉月……主人公
柚月……葉月の兄
咲希……葉月の親友
 
 サス
 葉月、真ん中に立っている
葉月「ねえねえ、死後の私」
??「なに?まだ生きてる私」
葉月「私いつ死ぬの?」
??「さあね」
葉月「とぼけないでよ。ちゃんと言って」
??「ああごめんごめん。でも禁止されてるんだ」
葉月「え、なにが?」
??「死ぬ時のこととか、死後の世界のこととか、言うのをね」
葉月「それぐらいよくない?」
??「厳しいんだよ、逆らえない」
葉月「そっか、私、死後の世界でも誰かの言いなりになってるんだ」
??「暗いこと言わないの」
葉月「だって事実じゃん」
??「たまにはそこから目を背けないと、息詰まってしまうよ」
葉月「それができてたら苦労してないのに」
??「そうだけどさ、試しにやってみたらどう?現実逃避」
葉月「たとえばなにをすればいい?」
??「うーん、大好きなマフィンが百万個出てきた妄想をするとか」
葉月「……食べ物ってたくさんあればいいってもんじゃないから。限度があるから」
??「そうね太るしね」
葉月「そもそも生存願望ない人間に食欲ないし。却下」
??「じゃあ空からイケメンが降ってくるとか」
葉月「なにそれキモい。無理なんだけど」
??「某映画に喧嘩売ってるよそれ、」
葉月「イケメンにこだわるほど余裕あると思った?そもそも、もうすぐ死ぬ人間に男なんていらないよ」
??「今ちょっと言う順番間違えたよね?ほんとは男欲しいんでしょ?」
葉月「うるさい。細かい。いらないったらいらない」
??「大丈夫、死後の世界では彼氏できるよ。本当に」
葉月「え、じゃあ死のうかな」
??「嘘だよ」
葉月「………」
??「やっぱ欲しいのね」
葉月「……切っていい?」
??「拗ねちゃったか」
葉月「予習もやんなきゃいけないし」
??「もう直ぐ死ぬのに予習はやるんだ」
葉月「真面目ですから」
??「ふーん」
葉月「じゃ、バイバイ。またね」
??「バイバーイ」
 
葉月、前に出る。
葉月「一ヶ月前。とてつもなく死にたくなった……今もだけど、どこかに逃げてこの状況から抜け出したかった。その時の私の机の上には、小さな紙があった。何かと思い手を伸ばしてみれば、心の相談ダイアル、なるものだった。なんでこんな私が生きてるんだろう、と思う日々だった。この感情をぶつける場所がほしくてまあ、電話をかけた。おもしろかった。自分の声が返ってくるんだから。まるで昔飼ってた王蟲みたいでも脳みそはあった。王蟲返しではなかったから。ちゃんと喋ってた。キモかった。この声で喋る人間が二体。相当な状況である。切ろうとした瞬間、私のような彼女は言う。待ってよ。あなた死にたいんでしょ。その通りだった。私の気持ちがわかるなんて、私しかいないはずなのに。そして彼女は言った」
 
 暗転
 
葉月「私は、死後の君だよ」
 
 教室、葉月、机に顔を突っ伏している。
 咲希、登場。
咲希「おっはよーーー!!って、生きてる葉月??」
葉月「ちょ抱きつくなよ咲希。死んでるよ。バイバイさよなら」
咲希「葉月、葉月ぃ!!!!ぴー、ぴー。おっほん。お亡くなりの時刻は、ええっと、今何時」
葉月「8時5分」
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