からくり人形
からくり人形

[登場人物]
人形
カナギ:男。山鳩村に住む青年
ワカバ:女。カナギの妹
ヤクモ:男。盗っ人
イズモ:男。盗っ人でヤクモの弟子
ゲン:行商人
研究者
村人

〇カナギとワカバの家

ワカバ帰宅。籠を背負い、腰に小さい壺を提げている。
ワカバ 「ただいまあ」

カナギは読んでいた書物を急いで隠す

ワカバ 「昨日とった薬草、全部売れたよ。これだけかな、売れ残ったのは」

ワカバは腰の薬壺をポンと叩く

カナギ 「……ああ」
ワカバ 「聞いてる? もう!」

ワカバ、呆れながら籠を置く。

ワカバ 「ねえ、テル!」

人形はワカバを見てうなずく

カナギ 「何がテルだ。勝手に名前つけんな」
ワカバ 「じゃあお兄ちゃんはこの子のことなんて呼ぶの?」
カナギ 「人形、ただの人形」
ワカバ 「やだ」

ワカバは人形に話しかける

ワカバ 「あなたの名前はテルよ。光って書いてテル!遠い国のお姫様の名前なの」
人形 「ありがとう」
ワカバ 「ほらあ、私の付けた名前気に入ってるんだわ。ねえ、テル」
人形 「ありがとう」
カナギ 「だから、そう言うように組み込まれてるんだって」
ワカバ 「そう言うようにってなに。テルが心からの気持ちで言ってるわ」
カナギ 「ただの人形だぞ」

ワカバ 「もっとたくさんの言葉を話せたらいいのにね」
カナギ 「何言ってんだ、声が出るだけですごいんだぞ。こいつが出せる数語の言葉だって緻密な設計で組み込まれている。しかも音の出るほうに顔を動かせる。すげえ発明だ」
ワカバ 「設計設計って、テルは生きてるのよ」
カナギ 「人形だ。生き物じゃない」
ワカバ 「人形にも心があるの。お兄ちゃん、こういうときだけ熱くなるんだから」
カナギ 「別に熱くなってなんか」

カナギ(人形を診ながら独り言)「こいつはなあ、目に見えねえ針の動きも歯車や色んな仕掛けも、何か一つでも欠けたら動けなくなっちまうんだぞ。世界一の凄い人形なんだ」

人形 「外が見たい。連れてって」
ワカバ 「良いわよ。今、窓を開けるわね」

ワカバ、人形を移動させる
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