Cage
瀬戸山光子作
Cage(ケージ)

あらすじ
平穏な日常を過ごす高校生の「私」。なんの変化もなく繰り返されるような毎日の中にふと起こった異変から、日常が少しずつ崩れていく。不可解なことを口にする家族や友人、毎日通学路ですれ違う不気味な子供、不幸の予兆を告げる占い師。自分の意識の深くにある檻に閉じ込められていた「影」が徐々に姿を現し、「私」はそうと気づかないまま「影」になって檻の中に閉じ込められ、「影」が「私」になって生きるようになってしまう。自我の不安定さをテーマにしたサイコホラー。

登場人物 12名
私 高校生
母 普通に中年
妹 小学生
先生 若い女性
同級生1 私の同級生
同級生2 〃
同級生3 この3人については個性を分ける必要はない。むしろ全く無個性に同じ人間であるかのように見える方が望ましい。
占い師 女性。あまり奇異な服装ではなく。
太鼓 太鼓を叩く人。白塗りメイク。黒服。ワンピースなど。太鼓は主に場面の始まりで鳴らされる他、緊張感のある場面では心臓の鼓動のように響く。
琴  琴をかき鳴らす人。白塗りメイク。黒服。ワンピースなど。琴はト書き上の場所以外にも、台詞の途中などに一音だけ鳴らされたりする。
影 「私」と同じ制服を着たのっぺらぼう。ずっと舞台中央奥の小部屋にいる。
小学生 通学路で毎日朝と帰りにすれ違う。朝は登校、帰りは道で遊んでいる。

舞台配置
舞台手前側プラチェーンで仕切られた広いスペースが上手と下手にあり、その間を通路が結んでいる。上手側は私の家。テーブルが置かれている。下手側は教室。教室机が置かれている。通路部分は通学路。占い師の机が置かれている。舞台奥は上手と下手に平台が置かれ、その上に太鼓と琵琶がいる。舞台奥中央には鳥籠状の小部屋があり、そこに影がいる。背景は大黒。

照明は可能であればカラーチェンジのできるLEDのパーライト等を舞台袖にSSとして配置し、舞台奥の床には赤のバックフットがあることが望ましい。音楽に合わせて無言の演技がある場面が多いので、その間照明で様々な演出をするとよい。
家は上手側、教室は下手側でそれぞれトップサスで区切られた範囲。通学路は占い師の周りのトップサスと、舞台手前側上手下手両方からのSS。

OP
大音量の激しい音楽と共に緞帳が上がり、登場人物たちが次々と舞台に上がり立ち位置につく。影は小部屋の中、太鼓と琴はその両脇に板付き。全員がそろったら音楽はフェードアウトし、太鼓がなる。

小学生がリコーダーで「とおりゃんせ」を吹きながらSSの光の中を上手から下手へとゆっくり歩いてくる。下手からは占い師が歩いてきて舞台中央で二人は向かい合っていったん止まる。太鼓の音と共に占い師は椅子に座り、小学生はまたリコーダーを吹きながら下手に去る。その間に私は上手袖にはける。

1 家
キャストはストップモーションの状態のまま、奥の太鼓、琴、影に弱めに単サス。
上手手前家に単サス。
太鼓の音と共に、私、母、妹のストップモーションが解ける。

太鼓の音が鳴ってからしばらく3人は無言で食事をとっている。
私は食べ終わり、食器を置く。

私    ごちそうさま。
母    おいしかった?
私    うん。いつもありがとう、お母さん。お母さんの料理は本当に美味しいよ。お皿、洗っておくね。
母    急ぐでしょ。いいわよ。流しに置いておいて。
私    うん。

私は食器をもって上手袖に去る。

母    学校は楽しい?
妹    うん。とっても。
母    お友達と仲良く遊んでる?
妹    うん。みんな、とっても仲良しなの。
母    そう。良かったわ。

私が鞄を持って戻ってくる。

私    じゃあ、行くね。いつも通りの時間に帰るから。
母    行ってらっしゃい。気を付けてね。
妹    お姉ちゃん、いってらっしゃい。早く帰ってきてね。
私    うん。行ってきます。

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