サカマタ














『サカマタ』


作 洋上Wara




【登場人物】

 イソナ  女性。「サカマタ」という海生生物の飼育員。二十四歳。
 幸助   男性。内向的な十四歳。よくサカマタを見に来ていた。





         〇サカマタの水槽上・深夜
          「サカマタ」と呼ばれる海生生物の水槽上部にあるバックヤード。
          巨大な水槽を見下ろせるように上部には金属製のデッキがあり、飼育員はその上を移動できる。舞台はそのデッキの出入り口で水槽の淵。空間の壁際にはビーチボール、バケツ、デッキブラシ、ホースなどが置いてある。
          奥には飼育員の休憩室兼倉庫の扉がある。
          舞台上ではイソナがぼんやりと座っており、首から笛を下げている。
          奥の扉から幸助が入ってくる。

イソナ       (幸助の足音に気づいて)準備おっけ?
幸助        はい。
イソナ       親御さんには遅くなるって言っといた?
幸助        ええ。
イソナ       携帯とか財布は?
幸助        全部ロッカーに入れました。
イソナ       よし。これで君が落ちたら笑っちゃうよ。
幸助        大丈夫ですよ。
イソナ       じゃあ呼ぶね。
幸助        あ、お願いします!

          イソナ、水槽に近づき、笛を鳴らす。

イソナ       まろ。

          水槽の中からサカマタの「まろ」が顔を出し「キュッ」と鳴く。

幸助        わあ……!
イソナ       まろ、今日は大切なお客さん。いたずらはナシね。

          まろは鳴き声で応答するが、直後小さな水飛沫を上げる。

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