終末世界で君に会えたら

登場人物
柴原花音……女性。18歳。ハンドルネーム「ハナ」
東雲皐月……男性。16歳。ハンドルネーム「サツキ」

研究員1……不問。準上演する場合はサツキ役の方が兼役
研究員2……不問。準上演する場合はサツキ役の方が兼役
放送  ……不問。準上演する場合は花音役の方が兼役


―――ここから本編―――




花音:(N)
   その昔、世界に謎のウイルスが蔓延(まんえん)した。
   ウイルスの感染力はとどまることを知らず、人々の体を蝕(むしば)み、多くの死者を出した。
   この国の高度な医療体制や度重なる研究の甲斐あって、感染しても投薬治療を施すことにより完治といわれるまでに回復することができた。
   また、政府や国民の懸命な対策によって感染拡大を抑え、事態は終息へ近づきつつあると思われた。
   しかし、数年後。
   かつての感染者に新たな症状が現れた。
   全身の肌が焼けたようにただれ、やがて体内にも拡(ひろ)がり、命を落とすのだ。
   ウィルスによる病の後遺症だと考えられた。
   さらに、かつて完治したはずの感染者の体内にはまだウイルスが残っていることが判明。
   この感染症は、投薬治療も効果をなさないーー不治の病であることが証明された。
   彼らの体液を通して、感染は再び拡大した。
   世界は、防護服なしでは外も歩けなくなった。


―二XXX年
―とある研究施設にて

―朝
―殺風景な部屋のなかに少女がひとり
―部屋の鍵が開き、防護服を身にまとった研究員1が入ってくる

研究員1:「やぁ、おはよう」
花音  :「……」
研究員1:「気分はどうだい?」
花音  :「いいわけないでしょ」
研究員1:「ははっ。文句が言えるなら元気だな」
     「朝食の前に『採取』だ。腕を出して」
花音  :「……(腕を出す)」

―腕には無数の注射痕
―注射針を出し採血をする研究員1

研究員1:「……よし」
花音  :「……毎日毎日、飽きもしないでよくやるわね」
     「ご飯持ってきて、人の血を採って、同じことの繰り返し。私と同じだわ」
     「ご飯食べて、血を採られて、暇を潰して……。ただ生きるだけ」
研究員1:「そう卑屈になるな」
     「この世界において、君が生きていることに意味があるんだよ」
     「君は、この世界を救うかもしれないんだ」
     「朝食はここに置いておく。……いい一日を」

―研究員1が部屋から出ていく

花音:「世界なんて……もう終わってるくせに」
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