空へ
『空へ』

 あの日、君がいなくなったあの夏の日の空には、私の声が届いているのだろうか。
 親友の三回忌の日、主人公の海は法要に訪れに行くわけでもなく、ある公園へと訪れていた。どこかかけてしまったかのように、ただ日々を漠然と過ごしていく海。そんな彼女の前に、一人の少女が現れる。
 「ねえ、そこの君。私を弔ってくれない?」
 そう私に聞いてきたのは、私にしか見えない幽霊であった。
 なぜ親友の三回忌に赴かなかったのか?幽霊の正体とは?
 ―――これは、一人の少女がもう一度、『友』に出会う物語だ。

登場人物

海 主人公。親友の死をきっかけに卑屈な性格になる。それもそのはず、親友が死んだのには彼女が関係があるからだ。元々は明るく快活な性格だったが、一転してしまった。

幽霊 主人公の目の前に現れた幽霊。名前はない、というよりも本人から明かされることはない。とてつもなく陽キャ。今の海とは対をなす存在だ。だが、彼女ほどこか、海の親友と似ているような…?謎の多い人物である。

京子 海の親友、「空」の母親。空が死んでからこの人もだいぶ変わった。優しい人であったがたった一人の愛娘を失い、海が空の命を奪ったわけではないと理解しているが、やっぱりあんたがそんなことしなければ…!!となってしまっている。そう考えているご自身のことも嫌になる始末。


以下本編


舞台明転。舞台上には公園を思わせるセットがあるといい。夏っぽい感じがあると最高
海上手から登場。

海 「…八月十五日、桧山空三回忌のお知らせ、か。あの日からもう、二年も経つんだ」

海 「………私が、顔を出す資格なんてあるわけないでしょ、馬鹿みたい、はは」

スポット海に集中。ここから語り口調

海 「―――空、今から二年前心臓の病により他界した、私の親友だ。幼いころから、毎日私は彼女の病室に遊びに行って、彼女の知らない世界を得意げに話していた。その中でも彼女は、この街で行われる、年に一度の花火大会に特に興味津々だった」

海 「…今思えば、その話をしたことが間違いだったのかもしれない。私たちが十五歳になった頃、彼女は花火が見たいと言い出した。ちょうどその日は花火大会の日だった」

海 「最近は彼女の体調も落ち着いていると聞き、私は行く?と聞いてしまった。……その時の空の顔は、とても嬉しそうだった」

海 「…そして見に行った花火。空一面に大きな音を響かせて咲く、大輪の花。彼女の目は、わずかに潤んでいるように見えた。…そして、『幸せだ』なんて呟いた」

海 「…でも、あまりに大きな音と興奮に彼女の弱い心臓は耐えられなかった。……彼女はその場で発作を起こし、病院に運ばれ、死んだ」

海 「そう、私が彼女を殺したようなものだ。みんなは違うというが、そんなわけはない。……私が、彼女を殺してしまったんだ」

スポット戻す。

海 「……ごめんね、空…そらぁ…」

幽霊 「辛気臭いねん!!!」
 
幽霊海の真後ろから声をかける

海 「うわああ!!? …え、そ、ら?」

海、幽霊をまじまじと見る

幽霊 「あ、あの~?」

海 「この顔、この声、ねえ、やっぱりあなた、空でしょ?」

幽霊 「え?」

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