スパークル

ツグ:高校2年生。ハメを外しきれない優等生タイプ。
チカ:高校2年生。明るい。喘息患者。咳や喘鳴などの発作の芝居があります。
 

 <3年前・夏>
 <劇場>

ツグ:(M)鮮やか、だった。

チカ:(以下役になって)あぁ神よ。あなたは大昔、この世に光をつくり、天を浮かべ、大地を足下に置き海を授けた。

ツグ:(M)夏の劇場の、ふやけた空間に。

チカ:しかし、しかしなぜ。なぜ、人などをお造りになったのですか。

ツグ:一閃が飛んだ。

チカ:あなたの御業は、たしかに奇蹟というにはあまりに生温い。しかし…その行いが、人が人である責苦を、不幸を、痛みをも産み落としたのです。

ツグ:(M)薄暗い舞台の上。スポットライトを独占した彼女の芝居が、劇場の空気を、観客の表情を、変えていく。

チカ:ええ、ええ、わかっております。
チカ:あなたが天の下に地をお造りになったように、人の上に人を置くのなら。人の尊厳をも支配するというのなら――っ!(毒を飲み干す)

ツグ:(M)身分違いの愛に手を出した町娘の、敬虔(けいけん)な自殺シーン。なんてことのないマクガフィン。なのに、それなのに。

チカ:(絶命も寸前に)この世に、私の信じた神など、いないのだわ

ツグ:(M)その一閃は、いともたやすく、私を殺したのだった。

 <唐突に立ち上がり、劇場を飛び出すツグ>

ツグ:(M)……っ!!……はぁ、はぁ……はぁ……

ツグ:(M)ちがう……ぜんぜん、ちがう……!今まで見たどのニーナより、わたしが演ったニーナより……っ鮮烈で、異様で……!

 <会場の裏>
 <立ち止まり荒い息を整える>

ツグ:…………(役になって)あ、あなたが、天の下に地をお造りになったように、人の上に人を……置くのなら。人の尊厳をも支配するというのなら……っ(存在しない毒を飲む)

ツグ:……っいない………神、なんて……

ツグ:(M)忘れもしない、その日。
ツグ:(M)私は演劇をやめた。



 3年後・現在
 <人気のない神社の境内>
 <遠くの方から祭囃子>
 <境内の階段に腰掛けるツグ>

ツグ:なんで抜けてきちゃったかなぁ、祭り。
ツグ:……ここ、似てる。

ツグ:(M)しんと張り詰めた空気、ぬるい夏の匂い。ぼんやりと月明かりに照らされた、薄暗い境内。ツグ:(M)目に映るものがすべてが苦い記憶とリンクする。ここは、あの場所に似ている。私の大嫌いな、あの場所に。

 間
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