ビリーブ沼
 
○遠野家・居間         
    座卓の前に座っている遠野瞳(60)   
    が、佐久間礼二(44)に腕を絡ませて  
    イチャイチャしている。佐久間もそれを
    甘んじて受け入れている様子。
    その向かいに座る遠野聡一(32)、唖
    然として二人を交互に見ている。
  聡一「誰」
  瞳・佐久間「え?」
  聡一「誰なの、ママ」
  瞳「誰って」
    瞳、絡ませていた手を腕から離す。
  聡一「これはどういう事なの?」
  瞳「んーだから聡ちゃん、この方はね、ママ
   の恋人よ」
     佐久間、爽やかな笑顔で礼する。
  佐久間「どうも聡一くん、挨拶、遅れちゃっ
   たけど、瞳さんの恋人の佐久間です。よろ
   しく」
    と、握手を求めて手を差し出す。
  聡一「いや、いやいや、ちょっと待ってよ、
   ママ、絶対、絶対、騙されてるって!」
    聡一、錯乱して頭を掻き毟っている。
  瞳「そんな訳ないじゃない、(佐久間に)ね
   え」
  佐久間「誓うよ、瞳さん」
  瞳「ほら」
  聡一「でもでも、ママはさ、ママはさ、僕が
   恋人だって言ったじゃないか! 言ったじ
   ゃないか! なのに」
  瞳「聡ちゃん……」
    瞳、悲し気な声で言う。
  瞳「それは、佐久間さんが現れる半年前まで
   のお話じゃない」
  聡一「半年は、半年は、ちょっと前じゃない
   か! ずっと、ずっと三十二年間、二人で
   さ、二人きりの家族でさ、今までやって来
   たじゃないか、どんな辛い事も乗り越えて
   さ、やって来たじゃないか!」
    聡一、ドンと座卓を叩いて、瞳と佐久間
    を睨む。
  佐久間「けどねえ、僕らはこうして……」
    瞳、佐久間を制するように肩に手を置き、
  瞳「礼ちゃん、私に言わせて」
  聡一「礼ちゃん!?」
  瞳「聡ちゃん、ママはね、あなたのダディと
   離婚してから、ずっと女を封印してね、耐
   え難きを耐え、忍び難きを忍んで来たの、
   分かるでしょう?」
  聡一「分かんないよ! 急にさあ、急に封印
   を解くとかさあ! 僕はママをこんな男に
   奪われて、これから、これからどうしたら
   いんだよ!」
  瞳「だから聡ちゃんが困らないように、ママ
   の代わりをね。用意したから」
  佐久間「だそうだ、良かったね」
  聡一「良くない! 代わりなんていらない、
   いらない、いらない!」
    と、駄々っ子のように座卓をドンドン叩 
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