セント・ベルの亡霊
殺し屋シリーズ:11話
 都心からはやや離れた殺し屋稼業を営む事務所。
 その内部で銃撃戦が繰り広げられている。
 ひとり、ひとりと倒れていく事務所お抱えの殺し屋たち。
 銃声が止み、硝煙の中から男女の2人組が現れる。

オウル:はい、お終いと。
オウル:こんなところですかねぇ。
スコーピオン:こっちも全部バラしたぞ。
オウル:お疲れ様です。
スコーピオン:とんだザコ連中だったな。
スコーピオン:カチコミ食らったくらいでみっともねぇうろたえ方しやがって……。
スコーピオン:同業と思いたくもねぇ。
オウル:くだらない仕事で日銭を稼いでいた方たちです。無理もありませんよ。
オウル:それにしても傑作でしたねぇ、得物を向けられた時の彼らの反応ときたら……。
オウル:あ、サソリさんの顔が怖すぎたのかな?
スコーピオン:そろそろ手が滑って殺しちまいそうだよ。
オウル:ジョークです、ジョーク。
スコーピオン:笑えねぇっつってんだろ。
オウル:さて、仕事も終わりましたし帰りますか。
スコーピオン:待てよ、待機だろうが。
スコーピオン:ボスの用事が済むまではよ。
オウル:ああ、そうでしたっけ。
スコーピオン:まぁ、別に帰ってくれてもいいぜ。
スコーピオン:お前と二人きりなんざ胸糞悪ぃしな。
オウル:あれ、怒ってます?
オウル:もうジョークって言ってるじゃないですか。
オウル:サソリさんほど笑顔の似合う女性はいませんよ。
オウル:ほら、もっと笑顔で。
スコーピオン:……次のシノギは背中に気をつけとけよ。
オウル:本心なのになぁ。

 近くのソファに腰掛けるオウル。

オウル:それにしても何の用事なんですかね、ボスは。
オウル:何か聞いてます?
スコーピオン:セント・ベルに用があるんだと。
オウル:セント・ベル?
オウル:目と鼻の先じゃないですか。
オウル:でもあそこって今はほとんど廃墟でしょ?
スコーピオン:……聞いてないのか。
オウル:何をです?
スコーピオン:生憎だが、お前と違って口は軽くねぇんでな。
オウル:あ、気になるなぁ。教えてくださいよ、暇なんだし。

 部屋の奥でかすかに物音がする。
 とっさに銃口を向けるスコーピオン。

スコーピオン:シッ、黙れ。
スコーピオン:残ってるみてぇだな、腰抜け野郎が。
オウル:おや、まだいましたか。
スコーピオン:さっさと片付けるぞ。
オウル:イエス・マム。
オウル:ああ、お先にどうぞ。
スコーピオン:は?
オウル:背中に気をつけろと忠告されたばかりなもので。
スコーピオン:つくづく癇(かん)に障る野郎だな。

 銃を抜き、奥へ進んでいくスコーピオン。

 同じ頃、セント・ベルの外れ。
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