ダウンタウンの喧騒
殺し屋シリーズ:8話
 時刻は昼下がりの下町。
 喧騒とは無縁である人気のない路地裏で、背中合わせに銃を構える女の2人組。
 1人は浮かない表情を浮かべている。

ベレッタ:(どーも、ベレッタと申します。しがない殺し屋やってるッス。)
ベレッタ:(今日は仕事もなーんにもないオフのはずだったんスけど、ご覧の通り見るからに怖いオッサンたちに追われてるんスよね。)
ベレッタ:(そんで背中合わせに構えてるお姉さんは……シャークさんッスね。)
ベレッタ:(すごいでしょ、この状況、マジで。)
ベレッタ:(ああ、ツいてねぇ……。)
ベレッタ:(どうしてこうなったんだっけ。)
ベレッタ:(よし、ひとまず頭の中を整理しよう。うん。)

 時は巻き戻り数分前。

 人もまばらなストリートをシャークが通話をしながら歩いている。

シャーク:ああ、もう店開けてやがったぜ、ルージュのやつ。
シャーク:まぁブルズアイさえ鉢合わせなきゃ大丈夫だろ。
シャーク:……んだよ、コーヒー飲みたかったんならお前も来りゃよかったじゃねぇか。
シャーク:オンラインで絶対外せないイベントがどうこう言ってただろうが!
シャーク:ったく、お前仕事中も散々ゲームしてんじゃねぇかよ……。

 かすかに聞こえてくる銃声と罵声。

シャーク:……あー、近くでドンパチやってるみてぇだ。ほっとけ。
シャーク:今から帰るけど何か要るモンあるか?
シャーク:……「パルフェ」のドーナツ?
シャーク:いいけどよ、お前また一人で全部食いやがったら殺すからな。
シャーク:おう、じゃーな。

 通話を切るシャーク。
 喧騒がだんだんと近づいてくる。

シャーク:ちっ、うるせぇな。
シャーク:ギャーギャー騒ぎやがって、どこの馬の骨だ……。

 何者かが民家の屋根の縁から跳び、シャークの目の前に着地する。

ベレッタ:よいしょォ! うっし、ナイス着地。
シャーク:あっぶねぇなコラ!
シャーク:どこから飛んできてんだ、てめぇ!
ベレッタ:いッ! す、すみません、その、急いでたモンでして……!

 必死に謝る女性の顔を見て何かに気づくシャーク。

シャーク:……あ? お前……?
ベレッタ:し、失礼しますッ!
シャーク:待て! そのツラ……。
ベレッタ:は、はぁ。
ベレッタ:どこかでお会いしました?
シャーク:「不運(アンラック)」!
ベレッタ:違います。
シャーク:嘘つけ!
ベレッタ:全然、全くもって違います。
ベレッタ:人違いッス。カンベンしてください。
シャーク:見間違うワケねぇだろ。
シャーク:殺されかけてんだぜ、こっちは。
ベレッタ:え……。あ、あぁ!
ベレッタ:シャークさんッスか! 奇遇ッスね。
シャーク:相変わらずふざけた巡り合わせだな、おい。
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