スカイスクレイパーの夜明け
殺し屋シリーズ:6話
 夜も更け切った都心の中央街。
 眠らぬ大都市を見下ろす摩天楼の一角に建つ巨大なビル。
 その上層階に位置する市長室。
 静寂にノックの音が響き、市長室の主が顔を上げる。

ベアトリス:ああ、どうぞ。

 ゆっくりとドアが開く。
 男女の一組が市長室へ足を踏み入れる。

ブージャム:こんばんは、市長。
ベアトリス:待ってたよ、ブージャム。
ベアトリス:おや、今日は一人じゃないのか。
ブージャム:ええ、彼女は夜目(よめ)が利くのでね。
ブージャム:腕も確かです。
ベアトリス:君の部下ならさぞかし優秀だろうな。
ベアトリス:よろしく、お嬢さん。
ベアトリス:市長のベアトリスだ。

 冷ややかな目線を送るスコーピオン。

スコーピオン:……知ってるよ。
スコーピオン:嫌でも目に付く顔だ。
スコーピオン:メガロポリスの「クイーン」様。
ベアトリス:はは、その名前も随分と皮肉が含まれてきた。
ベアトリス:女王も民に好き勝手をされちゃ形なしだ。
スコーピオン:ま、あんたにも政治にも興味はねぇよ。
スコーピオン:私はボスの付き添いで来ただけだ。
スコーピオン:小難しい話は勝手にやってくれ。
ベアトリス:さびしいな。名前も教えてくれないのかい?
ブージャム:ベアトリス、先にビジネスの話を済ませましょう。
ベアトリス:釣れないね。
ベアトリス:せっかく若い子とお近づきになれる機会なのに。
ブージャム:相変わらずですね。
ベアトリス:愛は不変さ。ゆえに尊いものだ。

 穏やかな笑みを浮かべ、デスクから資料を取り出すベアトリス。

ベアトリス:仕事の話だったね。
ベアトリス:ターゲットはこのリストにまとめてある。
ベアトリス:目を通しておいてくれ。

 手渡されたリストに目を通すブージャム。

ブージャム:……これはまた、政界の重鎮の名が並んでいますな。
ベアトリス:名前ばかりが先走っている連中さ。
ベアトリス:後処理は上手くやらせるから、その辺りの心配はしなくていい。
ベアトリス:君はいつも通り彼らを消してくれ。
ベアトリス:そう、彼らが見つけたスナークはブージャムだった。
ベアトリス:それだけさ。
ブージャム:ええ、承りました。
ベアトリス:よろしく頼むよ。

 街の方で銃声が何発が鳴り響く。
 遠くに汚い罵声も聞こえてくる。
 パトカーのサイレンの音。

ブージャム:外が騒がしいですな。
スコーピオン:そこの通りでドンパチやってるみてぇだ。
スコーピオン:シロートの喧嘩だろ。くだらねぇ。
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