のりとハサミの憂鬱

登場人物
ハサミ……かいとくんがもっと小さい頃から持っているハサミ。流行に疎い。
のり……つい最近かいとくんの部屋にやってきた液体のり。ハサミを先輩と呼び慕っている。
かいと……ハサミとのりの持ち主で工作が好きな男の子。最近外遊びがブーム
パパ……かいとくんのお父さん




ハサミ なぁなぁ。
のり  どーしたんですか?先輩。
ハサミ 最近……暇じゃね?
のり  確かに、暇っすねー。
 
ハサミ  とあるマンションの一室。青空と雲が広がる壁紙が貼られた子供部屋。部屋の主は、今パパと公園に出かけている。俺ハサミと後輩の液体のりは主人の部屋でそんな会話をしていた。
 

ハサミ かいとくん、最近、遊んでくれないよな……
のり  幼稚園に行くようになって、お外で遊ぶ方が楽しくなっちゃってるみたいっすね。
ハサミ 工作にはもう飽きてしまったか……
のり  最近のブームはブランコ?っていう乗り物に乗ることらしいっすよ。
ハサミ お前なんでそんなこと知ってるんだ?
のり  向こうの部屋でママさんと話してるのが聞こえたんっすよ。かいとくん、ブランコのことめちゃくちゃ楽しそうに話してましたよ。
ハサミ ブランコってそんなに楽しい乗り物なのか?
のり  さぁ?流石に見たことも乗ったこともないんでわからないっす。
ハサミ ……
のり  ……
ハサミ 俺たち、捨てられちゃうのかな。
のり  何弱気なこと言ってるんっすか!捨てられることなんてないっすよ!今はちょっと興味が移ってるだけで、また一緒に遊んでくれますよ!
ハサミ そうかな……。
のり  あ、そうだ。
ハサミ どうした?
のり  俺と先輩で一緒に、そのブランコってやつを作ってみましょうよ!
ハサミ そんなことして一体何になるんだ?
のり  敵と戦うにはまず、敵を知るべきでしょ?かいとくんがどんなことが楽しいと思っているのかわかれば、また気を引くことができるかもしれないっすよ!
ハサミ 確かに。それもそうかもしれない。だが、俺たちブランコってやつを見たこともないんだぞ?一体どうやって作るんだ?
のり  ふっふっふ。そこに、パパさんが忘れていったタブレットがあるでしょ?あれを使えばブランコのことなんて一発でわかるっす。
ハサミ そうなのか?俺は機械に弱くて、ああいうものの使い方をよく知らないんだが……お前はわかるのか?
のり  任せてくださいよ、先輩!
 
ハサミ のりはドアの前に落ちているタブレットとやらのところへと向かった。俺はその後をついて行く。彼はタブレットについているボタンを押し、画面を触って何やら打ち込んでいる。するとタブレットにたくさんの写真が映し出された。おそらくそれはブランコらしかった。
 
ハサミ お前、なんでもできるんだな。液体のりのくせに。
のり  先輩、それ、褒めてます?今どき文房具もこーいうの使えるようにならなきゃダメっすよ。
ハサミ なんともめんどくさい時代に生まれちまったんだな、俺たちは……
のり  それよりも、先輩、これがブランコってやつです。
ハサミ これどうやって遊ぶんだ?
のり  あ、動画もありますよ。なるほど、この板に乗ってゆらゆら揺れて遊ぶものみたいっすよ。
ハサミ なぁ、俺ら、これ作る意味あるか?もうブランコのことわかったし……それになんか作るの難しそうだぞ?
のり  見ただけじゃわかったつもりになってるだけっすよ。大丈夫、俺たちならできますよ!
 
ハサミ 俺たちはあーでもない、こーでもないと話し合ったあと、部屋中から折り紙や厚紙、紐などの材料を調達した。主人はいないが、工作を始める。折り紙をくるくる巻き、棒を作る。そして厚紙をブランコの座席の形にチョキチョキ。揃った部品をのりがペタペタと手際よくくっつける。俺たちはあっという間にブランコを完成させた。
 
のり  ほら、先輩。ちゃんとできたじゃないですか。
ハサミ あぁ。それに……なんだか久々に工作ができてすごく楽しかった。
のり  そっすねー。あ、先輩。せっかくブランコつくったんだから乗ってみましょうよ。
ハサミ お、俺はいいよ。のり、お前が乗れよ。
のり  後輩の気遣い受け取ってくださいよー。さぁ乗って乗って。
ハサミ お、おう。じゃあ……乗り方これで合ってるか?
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