夢の案内人
 夜ごはんとお風呂を終えたはるとくんはそれでも元気です。お気に入りの恐竜柄のパジャマ姿で遊んでいます。時計の短い針が8の数字を指しています。
「はると、もう寝る時間よ」
 ママが言いますが……
「えー、ぼくまだねむたくないよー」
 はるとくんはまだまだ遊びたいようです。
「そんなこと言って。朝起きれなくなっちゃうよ」
 はるとくんは渋々ベットに入ります。
「でもママ。ぼく、ほんとうにねむたくないんだ」
 はるとくんはベットの側に座るママに言います。
「困ったわね・・・・・・あ、そうだ」
 ママは何かを思いついたらしく、はるとくんのお部屋から出ていきました。はるとくんがベットの中でしばらく待っているとママが戻ってきました。手には少し古いフクロウのぬいぐるみがあります。
「ママ、それなあに? 」
「ママが小さい頃からずっと大事に持っているフクロウのユメちゃん。ママがはるとくんと同じくらいのとき、よく一緒に寝ていたの。
フクロウさんと一緒に寝るとなぜか不思議で楽しい夢を見ることができたのよ。今日はその夢のお話をしようと思って」
「なにそれ? 面白そう! 」
 はるとくんはフクロウのぬいぐるみとママのお話に興味深々です。
「絵本を読むのもいいけど、たまにはこういうのもいいでしょ? 」
 ママはフクロウのぬいぐるみをはるとくんに渡すと、昔見た夢について話出しました。
 


 (咲ちゃん(ママ)の夢の中。ふかふかした雲の上で眠っている。そこに先程のぬいぐるみと同じフクロウが飛んできて声をかける)
「おーいさきちゃん、起きて、起きて! 」
 フクロウのユメちゃんは雲の上ですやすや眠るさきちゃんを起こします。
「ふぁ・・・・・・ここは、どこ? 」
 咲ちゃんは両手で目を擦りながらユメちゃんに言います。
「ここは夢の中だよ。咲ちゃん、僕が夢の中を案内してあげるから一緒に遊ぼう! 」
「うん! 遊ぼう! 」
 咲ちゃんは飛んでいるユメちゃんを追いかけました。
「ところでここはどこ? 」
 あたり一面に広がるもふもふの世界を見渡しながら咲ちゃんはユメちゃんに聞きます。
「ここは雲の国。ふかふかの雲で遊びたい放題! 雲でできた滑り台やトランポリンもあって楽しいよ! 」
「素敵! 早速遊びましょう! 」
  咲ちゃんとユメちゃんはもふもふした雲の中を駆け回ります。雲でできたトランポリンは普通のトランポリンよりも高く飛んで、滑り台はとても高いのに地面がふかふかなおかげで全く怖くありません。雲の国では他にも咲ちゃんと同じくらいの子どもたちが遊んでいて、みんな楽しそうです。
 咲ちゃんが雲の中で遊んでいると、どこからか羊たちたくさんがやってきました。みんな雲のようにふかふかのもこもこです。そのうちの1匹が咲ちゃんのところへやってきました。咲ちゃんを背中に乗せたいようです。
「背中に乗ってもいいの? 」
 咲ちゃんは羊に聞きました。羊はこくりと首を動かしました。
「やったー! 」
 咲ちゃんは羊の背中に飛び乗りました。羊は咲ちゃんを乗せてゆっくりゆっくり歩きます。羊の毛は見たとおりふかふかもこもこで、おまけにとても暖かくて、まるでおひさまの光を目一杯に浴びたお布団のようです。咲ちゃんは羊の背中で思わずうとうと・・・・・・
「咲ちゃん起きて起きて! 」
 するとユメちゃんが咲ちゃんのところへやってきました。
「僕まだ咲ちゃんと遊びたいからねちゃだめだよ! 」
「どうして寝てはいけないの? 」
 ユメちゃんの声で目が覚めた咲ちゃんはユメちゃんに尋ねました。
「夢の中で寝てしまうと夢から覚めて起きてしまうんだ。起きちゃったら僕は咲ちゃんと一緒に遊べないよ」
「それはやだな。わかった、まだ寝ないでおくね」
 咲ちゃんは答えました。
「夜はまだまだ長いよ。さて咲ちゃん。他にも素敵なところがいっぱいあるんだけど、咲ちゃんはなにをしたい? 」
 ユメちゃんは聞きます。
「私、遊んだらお腹が空いてきちゃった。甘ーいお菓子が食べたいな」
「それなら僕がいいところを知ってるよ! こっちこっち! 」
 咲ちゃんとユメちゃんは雲の国を後にしました。
 


「わぁ、すごい! 絵本で見たお菓子の家だ! 」
 次にユメちゃんが案内してくれたのはまるでヘンゼルとグレーテルのお話に出てくるようなお菓子の家のある森でした。お菓子の家はクッキーにチョコレート、キャラメルにマシュマロと、全て咲ちゃんが大好きなものでできていて、とても大きなお家です。
「これ、全部食べちゃっていいの? 」
 咲ちゃんは目をキラキラさせながら言いました。
「もちろん」
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