真っ赤な空と真っ赤な命(6人版)
登場人物
ルイ神父 武田、店員(声のみ)
拓海
七海
美月


C(声のみ)

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教会の一室。七海、B含む複数の信者が輪になって神父の話を聞いている。

ルイ   えー、皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。今日の議題は、自殺です。あまり身近に自殺を感じたことはないかもしれませんね。この講義を始める前に、一つ言っておかなければいけない前提があります。前提。自殺とは、罪である。まずは皆さんにこれに納得していただくところから今日の講義を始めたいと思います。
B    なんで自殺は罪なの?
ルイ   自分の寿命を全うしなかったからです。
七海   死んじゃったその日が寿命なんじゃないんですか?
ルイ   いや、自殺の場合は違うね。大抵は。
B    なんでそんなことが分かるの?
ルイ   人間という動物は普通、自分から命を絶つなんてそんな愚かで卑怯な行為なんかするようなそんな動物じゃないんだから。

拓海が入ってくる

ルイ   ようこそ。どうぞこちらへ。

ルイ、七海、Bの隣あたりに拓海を座らせる。

七海   あの、自殺って卑怯なんですか?
ルイ   あぁ、卑怯さ。自殺に勝る愚かで卑怯な行為なんて存在しえないのさ。自殺は何よりも重い犯罪行為なのだよ
B    でも、自分の体も、命も、自分の物じゃん。なんで自分のものなのにそんなに卑怯なことになっちゃうのさ。
ルイ   生ける人間たるもの、神によって作られたこの命を粗末にするということは決して許されざる行為なのだよ。また、私やあなた方の命は私たち自身のものではない。神がお持ちになられているものなのだよ。
B    ってことはこの体は私じゃなくって神様の持ち物ってこと?
ルイ   そういうことだ。神が地上に作られたこの命を粗末にするというのはそれが何を意味するのか分かるだろ?
B    …はい。
ルイ   そうだ。神は私たちのことを地上で生かすために創造された。即ち神は私たちに地上で生きるようにおっしゃられているということである。これは神からのねがいなのだ。このお言葉、神の願いを無視して自分の肉体や命を粗末に扱うなど、到底許されざる行為であり、
拓海   そんなに悪いことなのかよ、自殺って
ルイ   どうかされましたか?
拓海   お前に何がわかるんだよ。なぁ。俺の気持なんかわかんないでしょ。
ルイ   何を言ってるんだね、君は。
拓海   さっきから聞いてりゃ散々に言いやがって。何が「自殺は愚かな行為」だ、何が「自殺は卑怯」だ。お前は何もわかっちゃいねぇじゃねぇかよ。
ルイ   まぁまぁ落ち着きたまえ。これは聖書に基づく言葉であり、
拓海   なにが聖書に基づく言葉だよ。ちっともありがたいお言葉じゃねぇよ。あれ読んでたらみん救われるのかよ。んなわけねぇだろ
ルイ   よく聞きなさい、迷える子羊よ。人は神が創造されたものであり、神の所有物であるのだ。神は私たちに肉体を与えてくださり、神の霊をそこに宿されたのだ。これを授かったからには、
拓海   んなもん聞き飽きたんだよ。おめぇにはあいつの気持ちなんかわかんねぇだろ、だからそんなこと言えるんだよ。自殺についての講義やってるって入口にあったから来てみたけど、全然ありがてぇ話してねぇし、
B    どうしたんですか、
拓海   うるせぇ、黙ってろよ。
七海   なにかあったんですか。
拓海   …うるせぇよ。こいつの言葉なんか聞いてもやっぱりあいつはもう戻ってこないんだよ。いくら願っても…会いたいって思っても…おめぇらそんな経験したことねぇだろ。だから黙ってろよ…
七海   私でよろしければ、お話お聞きしましょうか。
拓海   お前誰だよ。
B    七海さん。この教会に住み込みでシスターになるためにお勉強しているの。
拓海   で、なんだよ。
七海   お話、聞かせてください。私も幼いころ、両親をなくしているので、少しはお気持ちがわかるかもしれません。ルイ神父、少し席を外していただいてもよろしいですか?
ルイ   …わかりました。

ルイ、部屋を出る。

B    ほら、一回はなしてみたらいかがですか?
拓海   …わかったよ。あいつと出会ったのは、半年くらい前の、真っ赤な夕日がきれいな日だった

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