あらすじ
2022年3月11日、劇作家相馬杜宇は近所のパン屋のウクライナ応援フェアでピロシキを見かけた。相馬は左の片麻痺で杖をついている。
ピロシキをとりあえず買ってみたが、応援している場合だろうかと漠然とした不安を覚える。相馬はチェーホフが好きだという理由で大学の露文科に進んだが、情勢のことはわからない。そもそもなぜ戦争が起きたのか?
人々は神社に参拝したり、寄付を集めたりしている。でもそんなことして意味があるの? やってる人達って情勢のこと詳しくないし、何で起きているか知らないままで今もウクライナ市民が亡くなっている。これってものすごくグロテスクなことなんじゃないか?
そんな時、ロシアがウクライナの産婦人科を爆撃したニュースを知る。ヤバいでしょ、赤ちゃん産むところに。相馬は無知からこの事態を理解する過程を戯曲にしようと思い付く。早速演劇関係者に声をかけるが、様々な反応がある。話の過程で「とりあえずピロシキ」というタイトルを思い付くが、関係者からふざけすぎているようであまり良いと思えないという反対意見が上がる。いやピロシキ売ってんのは事実だし、何言ってんの?
SNS上でやりあう。諫めるのか諭すのかよく分からない意味深なメッセージが届く。演出家からは「雑音に気にせず書きたいものをのびのび書いた方が良いのでは?」と助言を受け、執筆に励み、いよいよウクライナ情勢の専門家への取材を取り付ける。果たして相馬の運命はいかに?